記憶力を保つハーブ3種「あなたの安らかな眠りのために」
1985年の映画『花いちもんめ。』はアルツハイマー型認知症を患った大学教授と、その家族の苦闘を描いた秀作でした。
「老いで壊れていく記憶力」
主役の患者である鷹野冬吉を演じたのは、今は亡き名優・千秋実さん。黒澤映画『七人の侍』の一人でもある千秋さんが、認知症で「壊れていく老人」を鬼気迫る演技で見せていたのが印象的でした。
とくに映画の最後のほうで、もうほとんど正気を失った冬吉が宍道湖の夕陽に向かって叫ぶシーンは、映画館で見ていて胸がつぶれるほどでした。
千秋実さんは58歳だった1975年に脳出血で倒れ、懸命のリハビリを経て映画界に復帰するというすさまじい体験をしました。その実体験があって、この認知症の老人の役でも、まさに病と向き合う迫真の演技ができたと千秋さんご本人も、生前に語っています。
同じく老人の認知症を描いた先駆け作品が、有吉佐和子さんの小説『恍惚の人』。発表されたのは1972年でした。
以来半世紀、日本は「高齢化」といわれた社会から「超高齢社会」へと、まさに分かっていた通りになって現在に至るわけですが、それを優しく包む社会環境は、はたしてどれほど整えられたでしょうか。
睡眠薬の常用は「認知症リスクを高める」
2014年に英国の医学専門誌『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)』は、カナダとフランスの科学者がアルツハイマー型認知症患者と睡眠薬「ベンゾジアゼピン」との関係について、その潜在的リスクを調査したと発表しました。
その調査によると、「6カ月間の睡眠薬使用で、アルツハイマー型認知症の発症のリスクが84%増加した」と言います。そのほか多くの研究により、睡眠薬を常用すると、認知力や記憶力が低下することも分かっています。
睡眠薬を飲むことと認知症発症との因果関係について、その詳細はまだ不明だそうです。しかし、「睡眠薬を常用しなければ眠れない」という状態は、それ自体が通常の健康状態ではなく、たとえ薬で眠っても、本当の意味で心身を休めて眠ったのではないのかもしれません。
皆様は、ぐっすりと深く、よくお休みになられていますでしょうか。
日頃から不眠や心配で眠れず、よく睡眠薬や睡眠導入剤を服用する人は、中年以降になると記憶力の低下を覚えると言います。したがって、よほど特別なケースでない限り、睡眠薬の常用はお薦めできません。
まずは、健康面と生活面の両方から、心配事の原因を探して問題解決していくことが肝要です。睡眠薬を飲まないからといって、その代役をお酒に求めることも、生活面および健康面の両方から問題解決になりませんので、その選択肢は外しておきましょう。
気持ちを落ち着かせる「ハーブの効果」
さてここでは、記憶力を回復し、気持ちを爽やかにするとともに、安らかな眠りに入るために役立つ「3種のハーブ」をご紹介します。
ローズマリー、セージ、レモンバームの3種は、最も記憶力を高めるハーブと言われています。
英国のニューカッスル大学は、長期にわたり植物のもつ効能と健忘症や認知症との関係を研究しています。同大学の研究によると、レモンバームとセージからの抽出物の効果が、認知症の改善薬であるアセチルコリンエステラーゼ阻害剤に似ていて、脳内の線条体(四肢協調運動および睡眠)と海馬(情緒)に作用することで、大脳皮脂には影響せずに記憶力や情緒の安定、および認知能力を助けることを発見したと言います。
また、その他の科学研究により、ローズマリーの香りをかぐと、記憶力を75%高めることができるばかりか、認知力、長期の記憶力、ヴィジランス(警戒心)、演算能力など全ての感覚の向上に役立つといいます。
こうした効能のあるハーブから採ったエッセンシャルオイルを嗅ぐことで、精神的な落ち着きが得られるならば、記憶力の回復はもとより、日中の気分転換や就寝前のひと時に使用しても良いのではないでしょうか。
睡眠薬を常用することよりも、こうした方法ならば安心で、ご高齢の方にも十分お薦めできますよ。
(翻訳編集・鳥飼聡)