米紙、米軍トップの中国との密通を暴露 ルビオ議員「転覆行為」と解任促す
米ワシントン・ポスト紙は14日、米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長が、2020年の大統領選挙の頃、中国軍と2回の私的な電話会談を行い、「米国は中国を攻撃しない」と伝えたと報じた。マルコ・ルビオ上院議員(共和党)はジョー・バイデン大統領にミリー氏の解任を要求した。
ルビオ氏は、14日にバイデン氏に宛てた書簡の中で、「ミリー将軍のこれらの行動は、彼が健全な判断力を欠いていることを明らかに示しており、私は彼を直ちに解任することを強く求める」と書いている。
「軍の上級士官が米軍の作戦に関する機密情報を漏らす危険性は、言うまでもない。このような転覆行為は、外国との取引や交渉において国家権力を行使する大統領の能力を損なうものであると強調したい」とルビオ氏は語った。
ルビオ氏は、ミリー氏が国家の安全保障を無視しただけでなく、「ミリー将軍は文民である軍最高司令官(大統領)が核攻撃を命令できるプロセスを妨害した」と述べた。
ルビオ氏は書簡の中で、「これは危険な前例である。ミリー将軍や他の人たちが今後もそうする可能性がある。米軍の文民統制という確立された原則を根底から覆す恐れがある」と指摘した。
書簡の最後でルビオ氏は、「ミリー将軍を直ちに解任しなければならない」と再度強調し、「米国の国家安全保障と世界をリードする能力が危機に瀕している」と警告している。
トランプ前大統領「反逆罪で裁かれるべき」
トランプ前大統領は、14日にメディアの電話インタビューで、「もしこれが本当に真実ならば、ミリー氏は反逆罪で裁かれるべきだ」とし、ミリー氏は中国軍に完全に間違ったメッセージを送ったと述べた。
ワシントン・ポスト紙のコラムニストであるジョシュ・ローギン(Josh Rogin)氏は14日夜、トランプ前政権の国家安全保障担当者の話を引用し、ミリー氏が当時の対中外交担当高官に報告せず、中国と私的な外交を行うのは危険だとツイートした。
また、「米中両政府は当時、非常に複雑な議論や外交上の駆け引きを行っていた。省庁間の調整もなく、ミリー氏がこのような行動をとったことは憂慮すべきである。これにより、中国当局は、外交、経済、軍事など幅広い分野での判断を誤る可能性が高い」と指摘した。
「米軍トップが北京に2度の秘密電話を」
ワシントン・ポスト紙の記者、ボブ・ウッドワード(Bob Woodward)氏とロバート・コスタ(Robert Costa)氏は14日、近刊『危険(Peril)』の中で流出した情報の一部を紹介する記事を掲載した。ミリー参謀総長が中国軍の高級幹部にかけた2通の電話も含まれている。ミリー氏は電話で、米国は中国を攻撃しないと保証した。
それによると、ミリー氏は、中国共産党中央軍事委員会連合参謀部の李作成謀長に、大統領選挙の間近(10月30日)と、議会乱入事件の2日後(1月8日)の2回、電話をかけた。
ワシントン・ポスト紙の記者は、匿名を条件にした200人以上の米国政府関係者の話をもとに、事件の経緯をたどった。最初の電話でミリー氏は、「李将軍、米国は安定しており、すべてがうまくいくことを保証する」「中国に対して攻撃を仕掛けたり、軍事行動を起こしたりすることはない」「万が一攻撃することになった場合は、事前に通知する」と語ったという。
その2カ月後、ミリー氏は李氏に再び電話をかけ、「すべてが順調だ。民主主義というのは、時として混乱を招くものである」と告げた。
昨年11月3日の大統領選挙でトランプ大統領(当時)が敗北した後、ミリー氏は、米軍最高司令官としてのトランプ氏の命令、とくに核爆弾の使用に関する命令にすぐには従わないよう、部下に指示していた。
ミリー氏は、参謀将校との会議を招集し、トランプ氏が攻撃を命じた場合、自分に真っ先に知らせるべきだと伝えた。彼は会議で、出席した将校全員に一人ずつ約束させたという。
ミリー氏はまた、ジーナ・ハスペル中央情報局(CIA)長官(当時)とポール・ナカソネ米サイバー軍司令官に、トランプ大統領の行動を監視するよう依頼した。
ハスペル氏は、ミリー氏と同様に、トランプ氏が中国やイランを攻撃し危機を引き起こせば、大統領の座に留まり続けられると考えている恐れがあると懸念していたという。
同書によると、関係者の中には、ミリー氏の行動は権限逸脱に当たると考える人もいる。しかし、ミリー氏は「国際秩序の歴史的な亀裂や中国との偶発的な戦争を避けるため」に、自分がすべきことをしていると確信していた。
中国の李将軍との2回目の電話会談の前に、ミリー氏はナンシー・ペロシ下院議長(民主党)と電話で話した。
その会話の記録によると、ペロシ氏はミリー氏に、「制御不能になった大統領が、軍事的な敵対行為を開始したり、核戦争を行うために核のボタンを使用したりするのを防ぐために、何ができるか」と尋ねた。ペロシ氏は、トランプ氏の選挙不正の主張を「狂気の沙汰」と呼んだ。
ミリー氏はペロシ氏に「その考え方にまったく賛同」と答えた。そして、大統領が核爆弾を悪用することがないよう、「一連の管理プログラム」を採用すると約束した。
15日、ミリー氏の報道官は関連報道を否定する声明を発表し、ミリー氏の中国側との通話は国防総省の職員を通じて調整されたものだと述べた。
同日、バイデン大統領は、「私はミリー将軍に大きな信頼を寄せている」とミリー氏への支持を表明した。
(翻訳編集・王君宜)