「アウトブレイクは避けられたはず」米専門家、WHOより2週間早く感染症を把握
米コロンビア大学の感染症専門家であるイアン・リプキン(Ian Lipkin)氏は、中国政府が武漢での中共ウイルス(新型コロナウイルス、COVID-19)の発生を、世界保健機関(WHO)に通知する約2週間前の2019年12月15日に知っていたことを明らかにした。これは、中国当局が発生当初、情報を隠蔽していたことを示す新たな証拠とされている。
9月4日付の英紙デイリー・メールは、スパイク・リー監督が携わったドキュメンタリー番組の中で、リプキン氏が19年12月中旬に感染症の発生を知ったことを強調したと報じた。
武漢市保健当局が原因不明のウイルス性肺炎の発生を初めてWHOに報告したのは、同12月31日のことだった。
リプキン氏は世界的に著名な疫学者であり、中国で20年近く活動してきた。2003年に発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)対策への貢献が評価され、中国政府から表彰された。
「アウトブレイクは避けられたはず」
リプキン氏は、感染症が発生した直後、中国に出発した。出発前に、米国疾病予防管理センター(CDC)や「中国の友人」から状況を聞いた。その後、中国の李克強首相や著名な科学者たちとも会談し、今回の感染症について話し合った。しかし、正確な訪中時期は明らかにしなかった。
同氏はインタビューの中で、パートナーの陸家海氏(広州中山大学の疫学・微生物学教授)の言葉を紹介し、中国でのアウトブレイクは「早期警戒メカニズムが適切に機能していれば、実際には回避できたはずだ」と述べている。
WHOのウェブサイトによると、中国からの公式情報では、2019年12月8日に最初の症例が現れたとされている。2020年3月13日付の香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙は、中国当局の内部情報を引用し、湖北省の55歳の患者が2019年11月17日に感染を確認されたと報じた。同12月15日までに確認された症例数は27件、12月31日までに266件、2020年1月1日までに381件に増加したという。
2020年2月29日付の仏国際放送局RFIによると、中国国家衛生健康委員会(厚生労働省に相当)は同1月3日、武漢で原因不明の感染症について、すべての関連機関は生物学的サンプルや関連情報を承認なしに他の機関や個人に提供してはならないと規定した。武漢ウイルス研究所でも、ウイルスの遺伝子解析を中止し、既存の検体を破棄するよう求められたという。
リプキン氏は中国からアメリカに帰国して間もなく、ウイルスに感染した。彼自身は、中国当局が行った厳しい感染抑制策を高く称賛していた。ウイルスの起源をめぐる激しい論争の中で、彼は「中国実験室流出説」に強く反論した。 彼は米医学雑誌「Nature Medicine」に論文を発表し、「あらゆる種類の実験室リーク説」を否定した。
しかし、リプキン氏はその後、武漢の研究者がセキュリティの低い実験室でコウモリのコロナウイルスに関するリスクの高い実験を行っていたことを知り、ウイルスの出所について考えを改めた。現在では、ウイルスが実験室から流出した可能性を否定できないと考えているという。
(翻訳編集・王君宜)