米アップル、児童ポルノ検出ツールの導入を延期 プライバシー擁護団体などから厳しい批判
米アップル社は、アイフォン(iPhone)などの同社製端末に保存された児童の性的虐待画像を検知する機能の導入を延期すると発表した。検出ツールが、監視目的で利用されることを懸念するプライバシー擁護団体や研究者からの反発に応じた形だ。
アップル社は8月、児童性的虐待コンテンツのまん延を抑制するため、「iCloud」に保存された児童の性的虐待画像を検知する機能を導入すると発表した。
アップル社は暗号技術と人工知能を活用して「iCloud」に保存された児童の性的虐待画像を見つけ出し、全米行方不明・被搾取児童センター(NCMEC)に通報すると説明。また、アップル社が照合する児童の性的虐待画像のデータベースは、単一の団体や政府によって管理されているものではないと付け加えた。
この計画はプライバシーや自由を脅かし、政府による監視を強化する恐れがあるとして、セキュリティの専門家などから批判的な声が上がった。
ジョンズ・ホプキンズ大学の暗号化技術の専門家マシュー・グリーン氏は、この計画について、「この種のツールは、人々の携帯電話の中から児童ポルノを見つけ出すのに役立つだろう。しかし、それが権威主義的な政府の手に渡れば、どうなるか想像するべきだ」とツイッターでその危険性を指摘した。
アップル社は、巨大な中国市場での存在感を失わないために、中国政府に「譲歩」してきた。ニューヨーク・タイムズは5月、アップル社は、中国国営企業が運営するサーバーに中国国内のユーザーの個人データを移したと報じた。
中国では、2017年に施行した中国サイバーセキュリティー法によって、中国国内で収集した個人情報と重要データについては、中国国内で保管するよう定められている。これにアップル社が中国当局の要求に応じたとみられている。
セキュリティ専門家やアップルのエンジニアは、中国当局による個人データなどのアクセスを停止することはほぼ不可能だと指摘している。
これに対しアップル社は、「中国や、我々が活動するあらゆる場所で、ユーザーやデータのセキュリティが損なわれたことはない」と主張している。また、データ解読に必要なデジタルキーの管理は自社で行い、他国では使用していない暗号化技術を中国では用いていると強調した。
(翻訳編集・山中蓮夏)