迫る台湾有事危機「日本は手をこまねいてはいけない」=専門家
報道によると、自民党は台湾の与党・民進党と「安全保障協議委員会(2プラス2)」をオンライン会談をする方向で調整していることがわかった。
ジャパンタイムズ紙は18日、政府間ではない日台議員間の「2プラス2」対話は日本側が主導するオンライン会議で、自民党の佐藤正久外交部会長、大塚拓国防部会長の両議員が参加する予定だという。民進党側の参加者は未定と報じた。
今年3月の日米防衛・外務担当閣僚が出席する「2プラス2」会談や、4月の日米首脳会談の共同声明で台湾海峡の平和と安定の重要性が言及されて以来、日本の政治家らは台湾海峡の安全保障問題についてより明確な発言をするようになってきた。
7月に発表された「令和3年版防衛白書」では、初めて次のような言説が見られた。「台湾情勢の安定は、日本の安全保障と国際社会の安定にとって非常に重要である」とし、日本は台湾海峡の情勢について「もっと危機意識を持つべき」としている。
岸信夫防衛相が先日、オーストラリア有力紙シドニー・モーニング・ヘラルドの取材に対し、「中国が力によって地域の現状変更を試みている」と警告を発した。日本を取り巻く安全保障の環境がさらに厳しくなりつつあり、自身を守ることができるような体制を構築しなければならないと強調した。
同氏は、中国側と台湾の軍事的格差が年々拡大していると指摘し、「台湾の安定は日本の安全保障だけでなく、世界の安定にとっても非常に重要だ」との認識を示した。
台湾問題をめぐる日米中の緊張関係
米政策研究機関スティムソン・センター(The Stimson Center)の中国研究に携わっている孫韻氏はVOAの取材に対し、米中は台湾海峡で衝突が起きれば、沖縄にある米軍基地は必ず巻き込まれると述べた。
中国が沖縄にある米軍基地を攻撃の標的にするか否かは不明だが、台湾海峡における米中間の潜在的な危機に日本が含まれる可能性は十分あり、そのような状況下で、日本政府は「台湾海峡での危機に備えていないはずがない」と自らの見解を述べた。
米ワシントンのシンクタンク・グローバル台湾研究所(Global Taiwan Institute、GTI)の張倚維(ちょう・いきい)上級研究員は、日本政治家の台湾発言が具体的な行動に結びつくかどうかは不明だが、今後の米日台あるいは日台間の安全保障対話まで展開する可能性があると指摘した。
台湾海峡で紛争が発生した場合、日本にとって最大の関心事は、台湾に最も近い南西諸島の防衛だ。そして、日本がどのように反応するかは、「中国の軍事行動が日本の国家安全保障(離島防衛)に直接影響を与えるかどうか」や、「米軍による日本への要求とそれに伴う日米間の安全保障協力」にもよると述べた。
同氏によれば、日本ができることは、台湾海峡紛争への米国の介入を後方支援することだという。「ただ、台湾海峡紛争で中国が沖縄の米軍基地を標的にした場合、日本の領土に対する中国の攻撃には、日本の自衛隊と日米安全保障同盟がそれに対して対応しなければならない」
高まる中国の軍事的な脅威 安全保障上の強い懸念
米ハドソン研究所制海権センターのセス・クロプシー氏も、ここ数カ月、日本の政治家らが台湾の安全保障に関して「異例な」発言をしており、 これらの声明が実際の行動に結びつくことを望んでいるとVOAの取材に対して述べた。
クロプシー氏によると、このような日本の政治家の発言は、台湾周辺の頻繁な中国軍機侵入、 台湾海峡の「中間線」の台湾側への侵入、台湾に対するサイバー攻撃などが原因だとみている。
いっぽう、台湾事情に詳しい識者は、日本の政治家の発言には法的根拠がないと指摘する。東京大学の松田康博教授は台湾の自由時報への寄稿文で、日本の高官らの台湾情勢に対する危機感の現れは「政府の政策の変更を表しているわけではない」と指摘した。
松田氏は、「日本の安全保障は憲法や関連法により厳しく規定されているが、このなかに『台湾防衛』という概念はない。 これらの高官は議論を引き起こすために意図的に言葉を省略しているのではないか」と分析した。
ジャパンタイムズ紙は日台の「2プラス2」に関する報道によると、中国と台湾の緊張が高まっている中、自民党の外交部は2月に日台関係を議論するための「台湾政策検討プロジェクトチーム」を設置し、6月に中国の台湾侵略に備えるため、日本政府が台湾との関係を深めることを求める政策提言を提出した。
安全保障協議委員会(2プラス2)について、台湾・外交部の欧江安報道官は19日の定例記者会見で、「わが国の国会議員や政党が、世界の同じような考えを持つ国の国会議員や主要政党と交流を深めることは喜ばしいことだ」と述べた。しかし、政党間で交わされる議題の内容については、外交部はコメントしないとしている。
中国外務省の華春瑩報道局長は「2プラス2」の報道を受けて、「断固反対だ」と反発し、「台湾は中国の一部だ。(中国と)国交のある国が台湾といかなる形での公式交流を行うことは許されない」と述べた。
(翻訳編集・蘇文悦)