米政府発表の3回目接種計画、科学者からは懐疑論や異論も
[19日 ロイター] – バイデン米政権が18日に発表した新型コロナウイルスワクチンの9月20日以降の3回目接種計画を巡り、科学者らからは19日、効果がまだ証明されていないといった懐疑的な声も聞かれた。
マーシー医務総監は計画について記者団に「最近のデータは、コロナの軽症と中等症の予防効果が時間とともに薄れることを明確に示している」と説明し、形成した免疫力が減退していくだけでなく、まん延しているデルタ株の強さにも起因しているとの考えも示した。軽症と中等症への予防効果の低減パターンがこれからも続くことで、重症化や入院、死亡を防ぐ効果の低下につながる可能性があるとした。
米疾病対策センター(CDC)が計画の説明に用いたデータによると、ワクチン接種後に感染する「ブレークスルー感染」で最も重症化しやすいのは今のところ、高齢者だということが示されている。今月9日までに接種後にもかかわらず感染して入院した8054人のうち、約74%が65歳以上だった。このうち約20%が死亡した。
しかし、現状で入手可能なデータでは、より若くより健康な人にも同様のリスクがあるかどうかは明らかになっていない。ジョージタウン大学の感染症専門家で元食品医薬品局(FDA)の首席科学者であるジェシー・グッドマン氏は、ワクチン効果の低減が本当に問題になるかについては「まだ結論が出ていない」と述べた。
他の専門家は、米政府の発表した計画について、FDAやCDCの外部委員会によるさらなる吟味が必要だと指摘する。こうした会合が今月24日に予定されていたが、CDCは19日、ウェブサイトで日程延期を公表した。
一部専門家によると、全米でコロナの新規感染と死者が急増しており、一方で接種を受けられる米国民の約30%がまだ1回目の接種を受けていない状況で、3回目接種に焦点を当てることの意味には疑問を感じるという。
これに加えて、ロイターが取材した専門家全員が、世界各地の大勢の未接種者に接種することの方が必要なはずだと口をそろえた。
コーネル大学の疫学者、アイザック・ワイスフューズ氏は「自分の尻尾を負う羽目になりかねないということだ。米国と西欧で追加接種をどんどん進めても、他の地域からもっと危険な変異株がやってくる」とし、「新たな変異株の出現・到来を避けるためには、米国以外のよそで接種を進めなければならないというのが現実のはずだ」と指摘した。