YouTubeのペナルティを受けて、著述家の朝香豊氏は意見を表明した。参考写真(Getty Images)
朝香豊コラム

どこがポリシー違反なのか? 理不尽なYouTubeからのペナルティ

私の発言が問題となって、私が出演したYouTubeのあるチャンネルにペナルティが課され、そのチャンネルでは1週間にわたって新規の番組をアップすることができない事態に陥った。このチャンネルの経済的な損失は非常に大きい。

問題となった私の発言とは以下のようなものである。

「65歳以上の高齢者へのワクチン接種が順調に進み、一時期は高齢者が陽性者に占める割合が25%ほどもあったのが4%にまで下がってきた。高齢者がワクチン接種によって重症化や死亡が抑え込まれたとすれば、コロナはたちの悪いこともある風邪レベルのものであり、こういう状況になってきた中でオリンピックを無観客で行うのは筋が通らない」

今や自分の発言を動画を見て正確に確認することができないので、上記は自分が発した正確な言葉というわけではないが、内容的には上記のようなものである。「コロナはたちの悪いこともある風邪レベルのもの」というところが問題視されたようだ。

私の判断には根拠がある

私がこの発言を行った根拠の1つは、厚生労働省が発表している「新型コロナウイルス感染症の国内発生動向」にある。これには年齢別の死亡率(陽性者のうち何人が死亡したか)がグラフとしてまとめられていて、「10歳未満」「10代」「20代」「30代」の死亡率は0.0%であり、「40代」は0.1%、「50代」は0.3%、「60代」は1.4%、「70代」は4.5%、「80代以上」は12.3%と書かれている。40歳未満では死亡するリスクはほぼゼロ(0.0%)であり、「40代」や「50代」の死亡率もそれぞれ0.1%、0.3%にとどまっている。「60代」以上の死亡率が高齢者のワクチン接種によって大きく低減するならば、死亡リスクを過大視する必要はなくなるというのは、特におかしな判断ではないだろう。

2回接種後の発症予防効果はファイザー社のワクチンでは約95%、モデルナ社のワクチンでは約94%であると発表されており、これらワクチンの発症予防効果を信用するならば、ワクチン接種によって発症が抑えられ、死亡リスクも大きく低減するはずだ。

現在感染の主力になっているデルタ株(インド変異株)についても、両社のワクチンはなお高い有効性を保持している。例えばカナダ政府がバックにつく「カナダ予防接種研究ネットワーク」によると、2回接種後の発症予防効果はファイザー製で87%である。モデルナ製の2回接種のデータはまだ出ていないようだが、1回目接種でも72%であるとされ、これはファイザー製の1回接種よりも数値としては高い。

さて、東京都のコロナの新規陽性者の数が初めて3000人を超えたと危機的に報道されているが、7月25日、26日、27日の新規死亡者数は0人、0人、2人にとどまっている。連日20人以上亡くなることの多かった2月頃と比べれば状況は大きく改善してきている。高齢者のワクチン接種が順調に進む中で、コロナが特別恐ろしい病気ではなくなってきているという認識は、事実を歪めることになるのだろうか。そしてそこまで状況が改善したことを「たちの悪い風邪レベル」になってきていると表現することは、表現上許されないものなのだろうか。

どこがYouTubeのポリシー違反なのか

さて、YouTubeが掲げている「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の医学的に誤った情報に関するポリシー」によって、私の発言がどのポリシー違反に当たるのかを確認してみた。正直に言えば、私の発言がどのような論拠でポリシー違反に当たると判断したのかは、私にはわからなかった。

YouTube側はおそらく「COVID-19 の症状、死亡率、感染度は風邪やインフルエンザより深刻ではないと主張する」というポリシーに違反するのだと言いたいのだろうが、私は風邪やインフルエンザより深刻ではないとは全く言っていない。高齢者へのワクチン接種が進めば「たちの悪い風邪レベル」であるとみなせるのではないかとしか述べておらず、それは裏返せば高齢者へのワクチン接種をしないうちは「たちの悪い風邪レベル」より危険なものだという認識を示していることになる。

そのような意見であっても重大なペナルティーを課しているというのは、本当は私の発言がポリシーに違反したからではなく、番組の全体的な論調がYouTubeにとって気に入らないということではないのかという疑いを持ってしまう。つまり「ポリシー違反」を口実にしてYouTubeにとって気に入らない言論を排除しようとしているのではないかというものだ。そのために「ポリシー違反」を恣意的に利用している疑いは排除できない。

疑問のあるYouTubeのポリシー

なお、YouTubeが掲げているポリシーを見ていくと、これを誤りとして断定していいのかと疑問に思うものがいくつも出てくる。例えば「治療に関する誤った情報」の中には「イベルメクチンまたはヒドロキシクロロキンが COVID-19 の有効な治療法であると主張する」というものがある。なぜにここまでイベルメクチンやヒドロキシクロロキンに対して一方的に否定的な見解であるのかについては、大いに疑問を感じる。

イベルメクチンとヒドロキシクロロキンが新型コロナウイルス感染症の予防や治療に有効であるかどうかは、医学界の中でも見解が大きく分かれている。特にイベルメクチンに関しては有効性を評価する声は決して稀ではない。例えばペルーではイベルメクチンの投与が遅れたリマ州とそれ以外の8州で、死亡数や発生数において顕著な違いが出ていることが確認されている。メキシコではイベルメクチンを配布したチアパス州では、感染者数も死者数も激減し、他の州と顕著な対比が生じている。こうした違いは、パラグアイのアルトパラナ州(イベルメクチン配布)とそれ以外の州(イベルメクチン配布せず)などでも生じている。

アメリカでコロナ対策の最前線で治療にあたっている救急救命医の連合体であるFLCCCは、実際の臨床治験も踏まえてイベルメクチンの有効性を極めて高く評価している。FLCCCのコリー会長は米上院の国家安全・政府問題委員会に証人として呼ばれて、イベルメクチンの有効性を強く訴えた。コリー会長らはアメリカ国立衛生研究所(NIH)に対してイベルメクチンの有効性を否定する立場を変えるように働きかけを行い、NIHはその有効性を否定も肯定もしない立場に変更した。これにより臨床医がイベルメクチンを使う道が大きく開かれた。

その一方において、権威ある医学雑誌であるJAMAやBMJにイベルメクチンの有効性を否定する結果が掲載されてもいる。BMJにおいては二重盲検のランダム化比較試験という確度の高い方法で効果を否定する結果が発表されているだけに、医師の中にはイベルメクチンの有効性に慎重な見解を持つ人が多いことも理解している。WHOもイベルメクチンの有効性を否定して、「いかなる患者にも使用すべきではない」との声明を発表している。

だが、JAMAに掲載された論文に対しては学術的に不完全、不十分な内容だとする論考が相次いで発表され、アメリカの医師128名が連名で「米国の医師による公開書簡:JAMAイベルメクチン研究は致命的な欠陥がある」を発表していることも知っておくべきだ。また、中国との強いつながりによって科学の観点で疑問符がつく発表を繰り返してきたWHOの言うことを頭から信用しろと言われても、なかなか難しいのではないだろうか。WHOが今回のコロナウイルスについて、ヒトからヒトへの感染は限定的で、中国との人の往来に制限を行う必要がないと発表していたことが、この世界的な感染爆発につながったことを忘れることはできない。WHOが科学的知見にのみ基づいた客観・中立的な意見を常に提示するという信頼は、もはや持つことはできない。

こうした中でイベルメクチンの有効性を否定する議論はポリシー上問題ないとし、肯定する議論はポリシー上問題あるとの一方的に偏った判断をYouTube側がなぜ行っているのかは大いに疑問である。

ポリシーの策定と運用は慎重であるべき

世の中でそれまでの「通説」がそれまでの「少数説」に取って代わられることは当たり前のように起こる。「通説」を一方的に正しいとみなし、「少数説」を唱えることを認めないというのは一種の全体主義である。

YouTube側としても、この「通説」と「少数説」との関係が理解できないことはないだろう。だとすれば、こうしたポリシーの策定にあたっては非常に慎重でなければならないことにはYouTube側も同意できるのではないか。またそのポリシーを番組に現実に適応する際に非常に慎重でなければならないことにもYouTube側は同意できるのではないか。

だが現実にはポリシーの策定自体にそもそも偏りがあり、ポリシー違反の適応においてはさらに拡大解釈をしていると考えられる。

様々な見解について、どれが正しくどれが間違っているとの予断を持ち込まず、どの意見についてもよほどのことがない限りは表明できる場を用意するのが、プラットフォーム企業の責任ではないのか。そのプラットフォーム企業としての立場を逸脱して、保守的な主張を抑圧する働きをしているとの疑いを、私は持たずにはいられない。

事実、私の発言が問題視されたチャンネルだけでなく、数多くの保守系とされるチャンネルに対してほぼ同時にペナルティーが加えられたことも明らかになっている。他のチャンネルではジャーナリストの門田隆将氏、元衆議院議員の松田学氏、元中部大学教授の武田邦彦氏などの発言が問題視され、いわゆる「保守系」とされる有力なYouTube番組が相次いで停止処置を受けた。停止処置を受けたことで私が確認しているチャンネルは、文化人放送局、WiLL増刊号、チャンネル桜、ニュー速通信社だ。

YouTube側が潔白を主張するのであれば、こうした疑念を持たれていることに対して真正面から答える必要があるのではないか。YouTube側がポリシーの変更を含めて誠実な対応をすることを期待している。


朝香豊(あさか ゆたか)

1964年、愛知県出身。私立東海中学、東海高校を経て、早稲田大学法学部卒。日本のバブル崩壊とサブプライム危機・リーマンショックを事前に予測、的中させた。現在は世界に誇れる日本を後の世代に引き渡すために、日本再興計画を立案する「日本再興プランナー」として活動。ブログ「日本再興ニュース」の運営を中心に、各種SNSからも情報発信を行っている。近著『それでも習近平が中国経済を崩壊させる』(ワック)、『左翼を心の底から懺悔させる本』(取り扱いはアマゾンのみ)。

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