清朝時代、永清県の南門の外には、父を亡くしてから母を養うために物乞いをしていた乞食がいました。 彼には住む家がないので、地面に洞窟を掘って住んでいました。
ある大雪の日、永清県の知事である魏繼齊が洞穴の前を通りかかると、洞穴から歌声が聞こえてきました。 魏知事はそれを不思議に思いました。 左右にいた従者が、「これは乞食が歌っているのでございます」 と言いました。 知事は「なぜ歌っているのか」と尋ねました。 すると乞食が出てきて、「今日は母親の誕生日ですので、母を祝って、もっとたくさん食べるように歌を歌っているのでございます」と答えました。
知事は従者に命じて、この母子を車で役所に送りました。 役所につくと魏知事の母は乞食の母に粗末な布と穀物を贈り、魏知事は乞食に10貫のお金を与えました。 乞食はひざまずいてお辞儀をして、「母君様が私の母に報いてくれたものは、拒むことはできませんが、知事が私に下さったお金は受け取ることができません」と言いました。
驚いた魏知事は、「毎日残飯を乞うよりもいいだろう?」と言いましたが、乞食は「いいえ! 母は昔から残骸を食べておりましたので、不浄なものは何もないと安心して食べております。 私は愚かで無知な民なので、知事がどこから10貫のお金を手に入れたのか知りません。 私の母は80歳で、私は61歳です。民が満足するように、役人である人たちはみんなきれいであってほしいのです」と言いました。
この言葉を聞いた魏知事は、驚きと恥ずかしさで汗をかき、もうお金で報いることにはこだわらず、市内の金花街に家を建てて、この乞食の母子が住めるようにしました。 しかしそれを知った乞食は、母親を背負い、静かに永清県を後にしました。彼らがどこに引っ越したのか、誰も知りません。
(翻訳 井田)
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