2020年8月4日、中国南部の広東省にあるハッキンググループ「Red Hacker Alliance」の一員(Nicolas Asfouri/AFP via Getty Images)

米英、サイバー攻撃仕掛ける中国に「責任取らせる」 日欧と連携して非難声明

米政府は19日、中国による契約ハッカーを使った世界的なサイバー攻撃活動を受けて、日本や英国などの同盟国と連携して非難する声明を出した。中国に責任を追及するため、追加措置導入も辞さないとし、一段と対中強硬姿勢を強めた。

声明では中国が関与したとするサイバー被害の具体的な事例も挙げられた。身代金を要求するランサムウェア攻撃や知的財産の窃取などがあり、米政府はハッカーが「政府や企業、重要インフラ事業者に数十億ドルもの損害を与えている」と強く非難した。

同政権は、米国がEU、英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、日本、NATOと共同で、「これらの活動を非難し、ネットワーク防衛とサイバーセキュリティを促進し、経済と国家安全保障への脅威を排除する」と発表した。

また、3月に発覚したマイクロソフトの電子メールソフト「マイクロソフト・エクスチェンジサーバー」を標的としたサイバー攻撃は、中国の国家安全部門と繋がりがあるサイバー活動家によるものとする正式な見解を示した。影響は広範囲に及び、14万台のサーバーが被害を受けたという。

米国司法省は、少なくとも12カ国の海運、航空、防衛、教育、医療などの主要分野における外国政府および団体を標的としたサイバー攻撃に関与したとして、中国人4人を起訴したと発表した。

起訴状によると、ハッカー攻撃は中国国家安全省が支援している。起訴された4人はフロント企業を使い、中国政府の関与を隠蔽しようとしたという。このうちの3人は、中国国家安全部(MSS)の地方支局にあたる海南国家安全保障局(HSSD)の役員であったことが判明した。

アントニー・ブリンケン米国務長官は記者団に対し、中国は「国家が支援する活動やサイバー犯罪を自らの経済的利益のために請け負って実行するハッカーらのエコシステムを形成している」とし、断固とした対応を取ると述べた。

同盟国、中国を一斉に非難

日本や欧州の同盟国、北大西洋条約機構(NATO)なども一斉に中国を非難する声明を発表した。国際社会が中国のサイバー攻撃に一斉に声を上げるのは極めて異例。

EUのジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表(外相)は声明で、「EU及びその加盟国は、すべての国連加盟国によって支持されている、責任ある国家の行動規範に反して行われるこれらの悪意あるサイバー活動を強く非難する」と述べた。さらに中国に対し、これらの規範を遵守しするとともに、状況を調査するために適切な措置と実現可能な手段を講じるよう求めた。

NATOの北大西洋理事会も、米マイクロソフトに対するサイバー攻撃を非難する声明を発表し、サイバー空間における安全性、信頼性、安定性を損なうものだとした。

「我々は、中国を含むすべての国に対し、国際的な約束と義務を守り、サイバー空間を含む国際システムの中で責任ある行動をとるよう求める」と述べた。NATOが中国のサイバー攻撃に言及するのは初めて。

英国のドミニク・ラーブ外務大臣は、中国政府が「組織的」なサイバー攻撃を終わらせるための行動を取らない限り、「責任をとらせる」と警告した。

米政府は今回、中国政府に制裁措置を科すことは見送ったが、米当局者は「(中国に)責任を取らせるためのさらなる行動を排除しない」として追加措置の可能性を示唆した。

これを受けて中国外務省の趙立堅報道官は20日、「米国は同盟国を集めて理不尽に中国を批判している」「事実無根の捏造だ」と反論した。さらに米国こそ世界最大のサイバー攻撃の発信源だとし、同盟国と共に「中国に対してサイバー攻撃を行うのを停止するよう強烈に促す」と主張した。

中国共産党機関紙・人民日報傘下の「環球時報」は社説で、サイバー攻撃の指摘を「大嘘」と表現し、米国がサイバー攻撃を利用して同盟国に「中国を中傷」させようとしていると示唆した。また米国が「攻撃的な措置」を取れば、中国は「報復する」と警告し、米国の同盟国も中国の怒りを買うことになると付け加えた。

「監視している」とメッセージを発信

米シンクタンク、ランド研究所のティモシー・ヒース上級研究員によれば、米政府による19日の声明は、米国とその同盟国が監視しているというメッセージを中国に発信していることを意味するという。ヒース氏は、ラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に応じた。

いっぽう、中国国家安全部による国内活動と、国際犯罪的なサイバー活動を結びつけることは難しい。また、サイバー攻撃のコストは非常に低いため、声明によるこの攻撃を抑止する効果はあまりないとみている。

「ヘリテージ財団」の技術政策研究員ダスティン・カーマック氏は、最近、米国のサイバーセキュリティ体制が根本的に変化しつつあると指摘した。また米国政府は、独裁主義国家とサイバー犯罪に対応するために、攻撃と外交の枠組みを組み合わせるべきだと述べた。

「ロシア、中国、イラン、北朝鮮の政府には、我々は国家主導のサイバー攻撃を決して容認しないこと、そして米国に対するサイバー作戦を意図的に無視すれば、重大な結果を招くことを伝えるべきだ」

(翻訳編集・蓮夏)

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