2015年8月、北朝鮮の中朝国境付近を走る列車を見る女性、参考写真(Xiaolu Chu/Getty Images)

コンクリブロック毎日10個製造を強制 北朝鮮「国境の壁」建設に女性動員

北朝鮮は、中朝国境の壁を建設するために、地域の既婚女性を動員してセメントブロックを作らせている。現地情報筋がRFAに語った。壁は、北朝鮮北東部・両江道(リャンガン)の住民が越境取引をさせないようにするものだ。

コロナウイルスの拡散を阻止するために、2020年1月、北京と平壌は国境を封鎖し、すべての貿易を停止することで合意している。にもかかわらず、両江道で最大の都市である恵山付近では密輸事件が発覚。政府はこの1年間に相次いで摘発した。

財政難の北朝鮮では、国民の労働力を搾取することは珍しいことではない。しかし、情報筋によると、国民は、政府が女性を動員していることに怒っているという。女性たちは10月まで、毎日10個のセメントブロックを作らなければならないと情報筋は明かした。

安全上の理由で匿名を希望した同省の住民は7月5日にRFA韓国語放送に、「彼らは国境地域の自警団のメンバーだけでなく、朝鮮社会主義女性同盟のメンバーも動員している。彼女たちは壁の建設のためにセメントブロックを作っている」と語った。

既婚女性を長期的なプロジェクトに動員することは、多くの家族に破滅をもたらす可能性がある。市場経済化の進んでいない北朝鮮では、男性は政府からの給料をもらって仕事をしているが、それだけでは生活できない。多くの家庭では、公的な仕事を持たない妻たちが、家族を養うために事業を営まなければならない。

平壌はパンデミックの間、越境を本格的に阻止してきた。しかし、国境封鎖によって北朝鮮経済は壊滅的な打撃を受け、食糧価格が高騰した。これは、密輸業者が生計を立てるために中国から食糧や製品を持ち込む動機付けとなっている。

違法な越境取引を阻止するために、北朝鮮は公開処刑を行った。脱北をやめさせるために、国境地帯に特殊部隊を配備したり、地雷を敷設したりしていた。また兵士や警察に国境から1キロ以内にいる人間を見つけたら射殺するように命じた。

「地理的な特徴から、密輸業者にとって、恵山から中国に渡るのは国境の他の地域より比較的容易である。そのため、彼ら(当局)は両江道に壁を作っているのだ」と情報筋は語った。

しかし、この新しい壁のためのブロック製造により、人々の脱出への思いはさらに強まったという。「政府に対して、『このウイルス流行の緊急事態でも、人々は命がけで川を渡り、密輸をする。壁を作っても、川を渡るのを止められないのではないか』と批判的な意見が出ている」という。

また情報筋によると、政府は当初、軍人や若者の労働力を使って壁を建設する予定だった。しかし、整地に時間がかかりすぎたため、10月10日の党創立記念日の期限までに完成させるには、さらなる労働力を確保しなければならないという。

 

「動員された女性たちは、20代の新婚女性から60代の女性まで幅広い。人々は、当局が体の弱い60代の年寄りにさえ、重労働を強いていると不満を訴えている」と情報筋は述べた。

また、「彼女たちは毎日、各グループに割り当てられたすべてのブロックを作るために、山から砂を運び、十分な量のセメントと混ぜることから始めなければならない。彼女たちは『国境に壁を作ることで、民心の不安を止めることができるだろうか』と言って、この仕事に不満を漏らしている」という。

匿名を希望した2人目の情報筋は、「高さ2メートルのセメント壁と高圧配線の建設は、中国からのウイルス侵入を防ぐための命令であったが、目的は密輸や国外逃亡を恒久的に防ぐことである」と語った。

情報筋はまた、「彼らが命令を出してから1か月が経過したが、資材や人手が不足しているため、工事は思ったように進んでいない。省党委員会は、女性を動員する前に、必要な資材や資金を提供するよう住民に要求していた。これは緊急措置だと言っていた」と付け加えた。

家族の生計を担う女性たちは、この建設は役に立たないと指摘し、壁の上での作業を強いられていることに不満を抱いているという。

「どんなに高い壁を作っても、食料と自由を求めて川を渡ろうとする人々の意志を完全に抑えることはできないだろう」

北朝鮮は6月下旬、過去1年間の穀物生産量の不足を認めた。また、国の穀倉地帯とされる黄海南道で、全国の1万3千人以上の既婚女性に農作業の「ボランティア」を強要した。

政府事業のための強制労働は、人権団体によって人身売買や奴隷制の一形態とみなされている。

米国務省は、2020年版の「人身取引報告書(仮訳)(Trafficking in Persons Report)」で、北朝鮮を2000年の人身売買被害者保護法に基づく最低基準を満たす努力をしていない国として、最下位の「Tier3」に分類した。

「(調査)報告の期間中、大人と子供の集団動員、政治的抑圧システムの一環としての収容所、労働訓練センター、そして北朝鮮の海外契約労働者への強制労働条件の賦課などに関する施策がある」と報告書は述べている。

(翻訳・小蓮)

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