麻生太郎副総理兼財務相(KAZUHIRO NOGI/AFP via Getty Images)
<オピニオン>

麻生太郎副総理の台湾問題に積極的に取り組む姿勢は正しい 

麻生太郎副総理兼財務相は7月5日、東京都内で講演し、中国の台湾侵攻が起きた場合、「日本にとって(安全保障関連法の)存立危機事態に関係してくると言ってもおかしくない」との見解を示した。「そうなると、日米で一緒に台湾の防衛をしなければならない」と述べた。同氏また、「香港と同じことが台湾で起きないという保証はない」とも語り、危機感を示し、「台湾の次は沖縄」との持論を展開した。

香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙(SCMP)の報道によると、麻生氏は「台湾を取り巻く状況は『非常に激しくなっている』」と発言したが、SCMP紙は後に裏付けとなる引用を示すことなく、麻生氏がこの発言を「撤回した」と主張し、同氏の信用を落とそうとした。同紙はまた、麻生氏を「失言癖がある」と称した。同紙が麻生氏に対してネガティブな報道をしたのは、中国を拠点とする電子商取引大手アリババ・グループがSCMPを所有しているからかもしれない。

SCMPは、「中国政府は、日本の『台湾への執着』は歴史の教訓を学んでいないことを示していると、厳しく非難した」と報じている。中国外務省の報道官である趙立堅氏は、麻生氏の発言は「間違っており、危険である」と記者団に語った。

趙氏は、日本の軍国主義がかつて中国を侵略したと述べ、麻生氏の発言を領土侵略と捉えた。「日本は第二次世界大戦中に犯罪を犯したが、未だに台湾に執着し、歴史の教訓を学んでいない。今日の中国は、もはや過去の中国ではなく、他国が内政に介入することを許さない」とけん制した。また、中国の主権を守る揺るぎない決心と強大な能力を「見くびるな」とも訴えた。

残念なことに、日本政府関係者は麻生氏の発言から距離を置いた。加藤勝信官房長官は「麻生大臣の個人的な意見」とし、岸信夫防衛大臣は「台湾を国とみなさない『一つの中国』政策を支持する日本政府の姿勢に変わりはない」と、政府高官たちは麻生氏の発言に難色を示した。

しかし、麻生氏が台湾問題に積極的に取り組んでいる姿勢は正しい。そして、政府内でも多くの人が彼の意見に同意している。SCMPによると、「一流の政治家は通常このようなことを直接言うことはできないので、政府内の多くの人々が考えていると思われることを麻生氏が述べたことは驚きである」と東京の国際関係学専門の教授は述べた。

以上のように、日本、アメリカ、そして同盟国は、台湾の防衛に対する決意を示すに至らず、「戦略的曖昧さ」という失敗した政策を選んでいる。

このような曖昧さは、日米が台湾を守る強固な決意を下す前に、中国の台湾侵攻を引き起こすだけである。米国と同盟国が決心する前に中国が台湾を攻撃すれば、中国は侵略を成功させ、直接的な軍事的報復を受けないで済むかもしれない。ロシアは、1994年に米英との条約でウクライナの核兵器放棄と引き換えに領土保全を約束したにもかかわらず、クリミアを併合し、ウクライナ東部でも紛争を起こした。

民主主義国家の台湾は、中国本土やシンガポールにとって、権威主義的な政府のお手本になる重要な存在だ。中国の民主化は、国際社会の長期的な平和と安全のために重要なのだ。中国共産党は、権威主義が民主主義よりも効率的だと考えているようで、権威主義をさらに強化している。中国共産党は、台湾だけでなく、フィリピンやアメリカに対しても戦争の脅威を与えるなど、軍事化を推し進めている。中国軍は、インドやブータンの領土を奪い、南シナ海の5カ国(フィリピン、ベトナム、インドネシア、マレーシア、ブルネイ)から海洋領土を奪っている。中国の脅威は現実なのだ。

麻生氏の発言や、日本が直接攻撃されなくても同盟国を防衛できる2015年の集団的自衛権に関する法案は、少しずつ前進していると言えるだろう。

しかし、台湾の防衛に対する真の決意を示すには、麻生氏のような明確な口約束だけでなく、NATOに類似した多国間防衛条約や台湾への多国籍軍派遣、そして台湾が独自の核抑止力を獲得するよう奨励することも必要となるだろう。国際社会がこのような方法で民主主義国の仲間である台湾を全面的に支援できないのであれば、習近平は深刻な軍事的影響を受けることなく台湾への侵攻を実行できると考るだろう。習近平がこの計画を実行に移せば、私たちは自分自身を責めるしかなく、その責任は私たち全員が負わなければならない。


執筆者:Anders Corr(アンダース・コアー)

2001年にイェール大学で政治学の学士号と修士号を取得し、2008年にハーバード大学で政治学の博士号を取得。著書に『The Concentration of Power』(2021年刊行予定)、『No Trespassing』、編著に『Great Powers, Grand Strategies』などがある。

※寄稿文は執筆者の見解を示すもので、必ずしも大紀元の意見を反映しているのではない。

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