2021年5月、シリアで対テロ戦略に臨む米軍兵士。空には満月が浮かぶ。参考写真(John Moore/Getty Images)

米UFO報告書、80件の米軍訓練の妨害を記載 ルビオ議員「外敵の技術かも」

米議会の要請を受け、米情報機関を統括する国家情報長官室ODNI)は6月25日、未確認飛行物体(UFO)の目撃情報や分析に関する報告書を公開した。これらの物体の正体は依然として不明で、結論は出していない。しかし、80件もの「米軍訓練を妨害する」動きの確認を記載しており、議員や専門家は引き続き究明していく必要があると強調している。

今回の報告書は、「未確認飛行物体(UFO)」や「宇宙人」という言葉を避け、代わりに「未確認空中現象(UAP)」と表現している。

16年半あまりで144件の目撃情報

報告書で言及された144件のUAP目撃情報は、2004年11月から2021年3月にかけて、いずれも軍を中心とした米国政府の複数の部門によって観測されたもの。

144件の目撃情報のうち、何であったかを説明できたのはたった1件だけ。「大きな風船」だったと分析した。残り143件ははっきりとわかっていない。

説明できないUAPは、目的を持った行動が確認されている。目撃情報の80件は、米国政府の複数の監視装置によって確定され、そのほとんどが米軍の訓練を妨害していたという。

同報告書は、UAPが米軍の訓練場や軍事実験場の周辺でよく目撃されることや、UAPが高度な技術を持っていることなどが指摘されている。 21件の目撃情報に記載されている18件は、観測者は物体の「異常な動きのルートや飛行の特性」を報告している。

また、米軍機のシステムが、UAPの目撃と同時に電波を検知したこともあるという。UAPにはある種の加速能力があり、正体を隠す能力もあることが報告された。

米議会ではUFO情報を集める法案が可決 ルビオ議員「潜在的脅威」

昨年12月に米議会で可決された情報関連の法案は、情報機関や国防総省の担当者にUAPの報告を求めている。同法案では、UAPは米国の国家安全保障に対する潜在的な脅威であり、情報機関はこれらの未確認現象を協調して調査し、米政府高官の注意を喚起する義務があるとしている。

クリントン、ブッシュ両政権下で元・国防情報局副次官補を務めたクリストファー・メロン(Christopher Mellon)氏は、政府にUAP関連情報の公開を求める著名な人物のひとりだ。米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)によると、メロン氏は、今回のODNIの報告書について、表現こそ慎重だが、UAP研究史の中では間違いなく重要なターニングポイントであると評している。

メロン氏は「UAPの数や、場合によっては説明不能な超越的技術を過小評価しているかもしれない」として、依然として究明していく必要があると強調した。

UAP報告に関する法案を推し進めたマルコ・ルビオ上院議員は、VOAに対して「これらの目撃情報を真剣に受け止めるべきだ。地球外生命体だと思うからではなく、軍事空域で稼働する機械が存在しうるためだ。これらは、米国のものではない」と警戒心をあらわにした。

ルビオ議員は「もし、外国の敵が米国の気づかないところで何らかの技術的な飛躍を遂げていて、米国が急襲されたら…。それは私たちに想像力が欠けているということになる」と付け加えた。

(蘇文悦/佐渡道世)

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