タンパク質は、人間が筋肉を保つために欠かせない、重要な栄養素です。しかし、ご注意いただきたいのは、ベジタリアン(菜食主義者)、ダイエット中の人、高齢者の3種の人は、その食生活の影響により、タンパク質が不足しやすいのです。
本日は、台湾の栄養士である私(郭怡君)より、簡単にタンパク質を補充して筋力をつける方法を、日本の皆様にご紹介します。
タンパク質が不足しがちな3種の人
1 ベジタリアン(菜食主義者)
台湾では、国民の10%がベジタリアンであると言われています。毎日の食事に菜食主義をとる人には、それぞれの理由があります。宗教や信仰からの理由が主ですが、最近では健康志向やダイエットのために、菜食主義にしている人も多くなっています。
宗教や信仰によるベジタリアンの人でも、動物性のものを一切口にしない完全菜食主義の人もいれば、卵(無精卵)や乳製品は食べるという人もいて、その程度はさまざまです。
いずれにしても菜食主義者は、動物性タンパクをグルテンや植物性タンパクで代替する傾向があります。ご注意いただきたいのは、グルテンや加工した豆製品だけではタンパク質が不足しやすいことです。
そこでおすすめしたいのは、「加工程度の高い豆製品」よりも、天然の豆そのものを食べることです。
具体的には、台湾の精進料理で使われる「素鶏」や「素魚」は大豆タンパクを原料とする鶏肉や魚肉の代替品ですが、これらは「加工程度の高い豆製品」に当たります。それよりも、日本の皆様もお好きな「枝豆」がいいですね。台湾でも「毛豆」といって、よく食べられています。若い大豆を、さっと塩ゆでした枝豆は、消化吸収の良いタンパク源です。
そのほか、豆腐や豆乳は積極的に摂ってください。卵を食べられるベジタリアンは、1日に少なくとも1個は卵を食べるようにします。
2 ダイエット中の人
ここで言うダイエット中の人とは、「食事制限によって体重を減らす努力をしている人」という意味です。
もしあなたが「食事量を減らし、食べる肉を少なくし、摂取する総カロリーを毎日厳しく管理することで体重を減らすことができる」というお考えであったら、残念ながら誤った考えを持っておられます。
摂取するタンパク質が足りない時、人は空腹を感じやすくなります。その空腹感を満たすために、つい高カロリーな食品を多く食べてしまうのです。その分、完全な栄養素を含む食品は食べないので、ダイエットが難しくなるだけでなく、体を早く老化させてしまうという悪循環に陥ります。
体重をコントロールする最善の方法は、食事に十分なタンパク質を取り入れることと、栄養士の減量プログラムに従い、減量期間中には、計画摂取する総カロリーをそのまま3食に配分します。これで減量に成功するだけでなく、健康を損なうこともありません。
また、食事の際には、つい食べ過ぎてカロリーを摂りすぎないようにします。熱いスープを先に飲んでからタンパク質の肉を食べ、次に、野菜類や五穀を食べるようにすると満腹感が得られやすくなります。
肉料理を注文するときは、なるべく赤身の部位を選び、皮や脂の多い部位は避けましょう。蒸しもの、煮ものなど、あっさりした調理方法のメニューがいいでしょう。フライやソテーは、油が多くなるので避けてください。さらに肉料理は、野菜と組み合わせて食べると腸の健康を維持するのに役立ちます。
3 高齢者
高齢者は、消化機能が徐々に低下してくることにより消化が遅く、運動が少ないこともあって、食欲不振が起こりやすくなります。
慢性疾患に関係する心配も増えて、高血圧、高脂血症、高血糖などの三高症状を常に気にかけるようになります。また、歯の欠損や歯周囲の状態悪化、唾液の減少、咀嚼の困難など、口腔内の機能も低下してきます。
結論として「高齢者は肉類を控えるべきである」ということも言われますが、逆に、高齢であるからこそ、できるだけ現有の筋肉量を維持し、加齢によって筋肉が失われるスピードを遅くする必要があるのです。
そのため、何歳になっても適量のタンパク質を食事から摂取する必要があることを、ぜひご理解ください。
高齢者が食べやすいように、調理方法を工夫することも有効です。
ブロックの肉は、圧力鍋を使うか、時間をかけて柔らかく煮てください。肉をひき肉にして、さらにスープを加えて練り、滑らかな肉団子にしてもいいでしょう。魚肉は、高齢者が食べやすく消化吸収も良い、おすすめの食材です。
また、牛肉や豚肉などのほかにも、エビ、牛乳、ヨーグルト、豆乳、豆腐、卵の茶碗蒸しなど、良質のタンパク質が摂れる食品はたくさんあります。それらを適切に選ぶ「少量多食」方式によって、タンパク質をはじめ、各種の十分な栄養を摂るようにしてください。
加齢によって失われる筋肉量をできるだけ少なくし、老化に対抗するには、タンパク質を十分摂るほかに、バランスの良い食事によって完全な栄養を摂取するとともに、可能な範囲での運動を続けて、努めて筋肉の衰えを防ぐことです。
日本の皆様が、いつまでもお元気でありますよう、お祈りしております。
(文・郭怡君 翻訳編集・鳥飼聡)
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