世界各国は今、可能な限り広範なワクチン接種によって、新型コロナウイルス(中共ウイルス)の蔓延に歯止めをかけ、一日も早く集団免疫レベルに達することを望んでいる。現在、世界のワクチン接種率が最も高いとされる2つの国は、イスラエルとセーシェル。いずれも、すでに約60%の国民がワクチンを2回接種しているという。では、この2国において、ウイルスの感染状況はどのように変化したか。
世界で2番目に接種率が高いイスラエルでは、ウイルス感染によって発症する患者が今年1月から急速に減少した。イスラエルでは、主に米ファイザー社のワクチンを接種しているが、同時に米モデルナ社のワクチンも承認されている。5月上旬までに、イスラエル国民の58.8%が2回の接種を完了している。
1日に感染が判明した人数は、1月のピーク時の約1万人から最近では50~100人となり、目下さらにそれを下回って、ほぼゼロに向かっていると見られている。
そうした結果、今年2月初めから、イスラエルは段階的に都市封鎖を解除した。3月上旬には完全に封鎖が解除され、その後、屋外でのマスクの着用義務もなくなった。学校も昨年9月以来、初めて完全に再開している。
(図1)世界で2番目にワクチン接種率が高いイスラエルでは、ウイルス感染による発症者は1月から急速に減少している。(健康1+1/大紀元)
セーシェルは、インド洋に浮かぶ島国で、人口は約10万人。現在、世界で最もワクチン接種率が高い国とされている。すでにセーシェル国民の60%以上が、2回のワクチンを接種している。
セーシェルでは、主に中国製の国薬中生ワクチンが接種に使われている。国薬中生ワクチンは、中国医薬集団(シノファーム)傘下の国薬中生生物技術研究院が製造したもの。セーシェル国民の57%は国薬、43%はアストラゼネカ社製ワクチンを接種した。
ところが最近、セーシェルの新規発症者数は急速に増加している。首都ビクトリアにある病院には患者が殺到。政府は規制措置を取るとともに、救急センターの建設を急ピッチで進めている。
英オックスフォード大学のデータプロジェクトOur World in Dataによると、人口約10万人のセーシェルで、5月12日の統計では「人口100万人あたり2613人が新規感染者」となり、世界第1位となった。現在最も感染が深刻なインドでは、人口100万人あたりの感染者数は272人である。
セーシェル保健省によると、新たな感染確認者のうち37%が「2回のワクチン接種を完了した人」であるという。
こうしたセーシェルの現状は、中国製ワクチンの有効性に対する根本的な疑念を引き起こした。米紙『ニューヨークタイムズ』によると、セーシェルの初期段階の報告では、同国での国薬中生ワクチンの有効率は50%であったという。
中国製の国薬中生ワクチンは、その臨床試験の完全なデータは公表されていないこともあり、市場に出た直後から有効性と安全性について議論されてきた。同ワクチンについて、変異ウイルスに対する有効性、効力の持続性、高齢者および各種の基礎疾患患者に対する安全性、ワクチン接種後の副反応へのケアなどを含め、大量の詳細なデータが不足していることは否めない。
一部の専門家は、国薬中生ワクチンの接種では、集団免疫を形成することはできないのではないかと懸念している。コーネル大学のワクチン専門家、ジョン・ムーア氏は『ニューヨークタイムズ』のインタビューに答えて、「国薬中生ワクチンの接種後でも感染の可能性が高いことを、セーシェル政府は国民に知らせるべきだ」と語った。
一方、セーシェルのラドゴンド外交・観光相は、「セーシェルにおける感染者急増は、一部の国民が警戒心を緩めたことによるものだ」と述べた。
WHOは今年5月上旬、国薬中生ワクチンの緊急使用許可を承認したばかり。WHOの予防接種・ワクチン主管であるケイト・オブライエン氏は、セーシェルでの感染拡大の原因について「考察している」としながら、「状況は複雑だ」とも語った。
(文・柯弦 翻訳編集・鳥飼聡)
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