≪医山夜話≫ (17)
ナンシーのカルテ④
ナンシーが私のクリニックを最後に訪れてから、だいぶ日が過ぎました。私の推測では、彼女の化学療法は第一段階と第二段階を過ぎたはずです。知らせがないのはよい知らせだと自分に言い聞かせ、ナンシーが回復していることを願いました。
ナンシーがクリニックを再び訪れたのは、私が彼女のことを考えていた矢先でした。彼女は車椅子に乗せられて、体は三分の一くらいに萎んでいました。以前の彼女は体が大きく自信満々な感じだったのですが、今はとてもその頃の面影はありません。最も驚いたのは、彼女の目・鼻・耳などから血が滲みでていることでした。血の滲んだ汗が彼女の肌から流れていました。このような症状を私は見たことがありません。私は、ナンシーの夫に、彼女をすぐにでも救急病院へ連れて行くよう提案しましたが、意外にもナンシーは強い口調で反論しました。「いいえ! もうあの場所へは、二度と行かないわ。もう一度行けば、私はもうその部屋から出ることができなくなる!」
ナンシーの目からは血の滲む涙がこぼれました。彼女は弱々しくなりながらも、これまでの経緯を話してくれました。
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