下腹部の腹筋を刺激する運動の一例。運動だけでなく、飲食など生活習慣の改善も必要です。(楊宗翰氏提供)

なんとかしたいお腹回り テレビ見ながらできる2種の運動

男女を問わず、中年以降になると無情に出てくる下腹部が気になるものです。「お気に入りのズボンやスカートがはけなくなった」などの悩みだけではなく、そうした肥満が生活習慣病の要因になることは否定できない事実。コロナ禍のため活動制限もまだ続く昨今ですが、せめて年齢相応の健康を維持するために、メタボな「お腹」をなんとかする努力を今から始めましょう。

カロリー摂取と消費の不均衡だけでない肥満の原因

良くない生活習慣と加齢によって増えた脂肪は、確実に下腹部にたまります。年齢を重ねると、仮に体重はあまり変わらないとしても、筋肉が落ちて脂肪が増えることは避けられません。脂肪には、皮下脂肪と内臓脂肪があることは良く知られています。そのうち、中年以降の男性に多い内臓脂肪型の肥満は、主に腹部の内臓に脂肪がたまるものです。

女性に多い皮下脂肪型の肥満に比べて「内臓脂肪型の肥満は体重が落としやすい」と言われていますが、実際、そううまくはいかないもの。台北市にある康禾漢方医院の主治医・楊宗翰氏も「下腹部は、体の脂肪が蓄積しやすい第一の部位で、痩せにくいところです」として、下腹部が太るのは、生活習慣のほか、ホルモンの変化も関係すると指摘します。

30歳から40歳までの会社員は、仕事関係でのつきあいもあり、退勤後に酒を飲んだり、食事をしたりすることが多いものです。帰宅してからは、一日の疲れもあり、座ってテレビを見るだけ。ほとんど動かないので、食べて飲んだ分のエネルギーが脂肪となって溜まってしまいます。

50歳から60歳になると、更年期などホルモンの変化で基礎代謝率が下がります。そこで頻繁に食事をしたり、食べる量が10年前と変わらなければ、体がカロリーオーバーを起こして、これもまた脂肪が蓄積することになります。「多く食べて、あまり動かない。その上、加齢により基礎代謝率が悪くなる」とすると、肥満の一途をたどることは目に見えています。

これを漢方医から見ると、カロリー摂取と消費のアンバランスだけでなく、多くの場合、痰湿(たんしつ)や鬱血(うっけつ)などの要素と関係があると言います。

痰湿は、体内の湿気が多いため、排出されるべき体内の毒素が排出されていないこと。鬱血は、血液や体液などの循環がよくないことを示します。いずれにしても、下腹部が大きくなるのは内臓脂肪が厚くなることを指し、高血圧、高脂血症、高血糖などの「三高疾患」になりやすいリスクは避けられません。

「たくさん食べて、あまり動かない」「加齢で基礎代謝率が悪くなる」と、まず下腹から確実に太ります。(Shutterstock)

まずは食事の改善から

出っ張った下腹を平らにするには、まず食事を変えて、体内の余分な「湿気」を抜かないといけません。この場合の「湿気」とは漢方医学の概念で、排出されるべき体内の物質、例えば痰や尿として体外に排出される毒素を指します。それらが順調に排出されないことが問題である、つまり病につながる状態とされます。

漢方医学からのアドバイスとして「(多く)食べてはいけないもの」は、サラダや前菜などの冷たいもの、(台湾の街頭でよく売っている)果実を搾って氷を入れたドリンク、甘いお菓子、揚げ物、その他カロリーの高いもの、などです。

高カロリーの食品は、痰湿をさらに助長します。冷たい食品は湿気を蓄積させ、体内の湿気をますます重くします。カロリー摂取を減らすため、サラダを多く食べるようにしたい人もいるかもしれませんが、これは胃腸を悪くし、水分代謝に影響を与え、体を冷やすだけでなく、湿気の蓄積をより進めてしまいます。

漢方医学の考え方からすると「サラダ中心の食事」は適切とは言えません。温野菜や加熱調理した野菜を、積極的に食べてください。

また夜食や、多すぎる夕食は避けましょう。食事には4つのポイント「油少なめ、減塩、低糖質、食物繊維が豊富」を心がけてください。さらに、四神湯(台湾でよく飲まれる薬膳スープ)・ハトムギの湯・小豆の湯などの「利湿スープ」や飲料を多く飲んで、体内にある不要な湿気を外に出すようにします。

テレビ見ながら「お腹やせ運動」と「大腸マッサージ」

テレビを見ながらできる運動によって、腹筋を強化し、出ているお腹をへこませます。ソファに座り、両手で体を支えてバランスを保ちながら、上げた足を体のほうへ引いて腹筋を収縮させます。(冒頭の写真を、ご覧下さい)

この運動は、体内の循環が悪くて鬱血している状態を改善することもできます。運動によって心拍数が上がると、体内循環が促進されるだけでなく、余分なカロリーが腹部の脂肪に加算されることも避けられます。こうした運動と食事の改善を組み合わせて実践すれば、太ったお腹も徐々に痩せていくでしょう。

フィットネスのコーチでもある楊宗翰氏は、有酸素運動と無酸素運動を組み合わせて、1週間に2種類の運動を、半分ずつ実施することを提案しています。

水泳、ジョギング、自転車などの有酸素運動は、食事から摂取したエネルギーを消費することができ、脂肪蓄積を避けられますので、基礎代謝率を向上させます。一方、フルスクワット、つま先立ちスクワット、プッシュアップ(腕立て伏せ)などの筋力トレーニングは、筋肉の質と量を強化することで、これも基礎代謝率のアップに役立ちます。

消化の促進と排便促進のために行う「お腹のマッサージ」もあります。

食事2時間後ぐらいに、同じくテレビを見ながらでも行うことができます。食事の直後は避けてください。ソファに座り、おへそを中心に、右手で時計回りに大腸の走行に合わせて、体の右下、右上、上方、左上、左下へと順番にマッサージします。

楊宗翰氏によると、消化の促進だけでなく、お腹には多くのツボがあるため、このマッサージによって水分代謝の機能を高めることができると言います。

(文・蘇冠米 翻訳編集・鳥飼聡)

 

関連記事
寒い季節こそ、ゆったり過ごし心身を整えるチャンス。睡眠や食事、メンタルケアで冬を快適に楽しむ方法をご紹介します。
50年以上前から次世代の食料として研究されてきたオキアミ(プランクトン)。クジラなどの海洋性生物にとっては生存のための原初的な存在だ。そのオキアミからとれるオメガ3が注目されている。本文にあるようにオメガ3は人の健康にとっても有益なものだ。クリルオイルは、オメガ3と抗酸化成分が豊富で人気のある健康補助食品。フィッシュオイルに比べてコストが高い点が難点だが……
仏に対抗しようとした調達が、暗殺未遂や陰謀を重ねた末、地獄に堕ちるまでの報いの物語。
「犬に散歩される」気の毒な飼い主たち、笑っちゃってゴメンの面白動画→
過度な運動や減量で陥りやすい「低エネルギー可用性」。エネルギー不足が体に与える影響とその対策について、専門家のアドバイスを交え解説します。