密入国者が家の壁を叩いている…平穏な日常が脅かされる米南部テキサスの牧場主たち(下)
米国南部国境では今、大きな異変が起きている。メキシコから大量に押し寄せる密入国者が、国境警備隊の監視の目をかいくぐり、住宅の玄関先に現れるようになった。即応性に欠ける政府機関はあてにならず、テキサス州の地元住民は銃で武装するなど自己防衛を図る。混とんとする辺境の地を、英語大紀元の記者が取材した。
町の人口よりも多い密入国者
密入国者の急激な増加を受けて、テキサス州のキニー郡は4月21日、地域的な災害宣言を行った。しかし密入国の流れは止まらなかった。
米税関・国境警備局によると、デルリオの国境警備隊は5月20日から4日間にわたり毎日1000人以上の密入国者を逮捕した。その数はキニー郡の人口(3500人)を上回った。
国境警備隊による逮捕から逃れる密入国者の数も増えている。地元当局によると、4月には4万2000人以上の密入国者が米南部国境から侵入したのち、逃走した。
このような状況下で暗躍するのが、密入国を手助けする犯罪組織だ。法執行当局は大紀元の取材に対して、メキシコの犯罪組織は一人当たり2200ドルで、米国への密入国を請け負うと語った。一日に1000人を密入国させれば、組織はそれだけで220万ドルを稼ぐこととなる。
バイデン政権の国境政策に苦言
政府が有効な対策を打ち出せない中、住民は度重なる密入国者の侵入に頭を悩ませている。
「私はこの6週間、毎日不法入国者を見かけます。時には1日に複数のグループを見ることもあります」と牧場経営者のコールさんは、5月22日に行われた地元の会合で述べた。そして一人で牧場にいる間、密入国者と頻繁に遭遇することがあると明かした。
「私は国境警備隊と力を合わせて密入国者問題を解決したいと考えています」とコールさんは言う。しかし、状況はますます難しくなっている。
「確かに、国境を越えた米国の地には良いものがあるかもしれません。しかし35マイルも離れた川の向こう側に行き、法執行機関に捕まらないようにしてまで手に入れようとする行為は、とても正気とは思えません」。
コールさんの私有財産にも損害が出ている。数か月の間、密入国者がコールさんの境界フェンスを完全に切断する事件が7回発生した。そしてフェンスが根こそぎ引き抜かれた事件も3回あった。
コールさんは、バイデン政権の貧弱な国境管理政策のしわ寄せがテキサス州の住民に来ていると苦言を呈した。大紀元はホワイトハウスと国土安全保障省にコメントを要請したが、回答は得られなかった。
(翻訳編集・王文亮)