日本はワシントンと北京の緊張を制しつつ自国利益保護を=在米日本専門家が分析
米国は中国の台頭に対抗するために、同盟国、とりわけ日本を必要としているという。米スタンフォード大学社会学教授の筒井清輝氏は21日、日系英字紙への寄稿文で分析を示した。日本首相が初めての外国首脳として、ホワイトハウスで新大統領本人と会談を行なったのは、1989年、竹下登首相がジョージ・H・W・ブッシュ(George H. W. Bush)大統領との面会が初で、菅氏で2度目。日本との関係を重視していることに他ならないと論じた。
筒井氏は英字紙「日経アジア(Nikkei Asia)」への寄稿によると、竹下政権の日本は当時、米経済覇権を脅かす重大な存在だったと述べた。いっぽう、今日の米国にとって最大の脅威は中国であり、経済領域に止まらず、その脅威は世界の隅々まで広がっているとした。同記事は、同氏が所属するウォルターH.ショアンシュタインアジア太平洋研究センター(APARC)でも公表された。
また、バイデン氏は中国に対して強硬であり、日本の外交政策立案者が望んでいる対中姿勢を見せたという。「その代わり、米国は日本が正面からワシントン側に立つことを望んでいる」と指摘した。日米首脳会談後の共同声明には、日本は52年ぶりに台湾への言及を盛り込むとの同意を取り付け、「両岸問題の平和的解決」を促すという日本が好ましい表現を盛り込んだ。
ニューエコノミーの分野で世界的な主導権を握るために、共同声明では、「日米間の競争力と回復力(CoRe)パートナーシップ(U.S.-Japan Competitiveness and Resilience (CoRe) Partnership)」を発表した。「最も具体的な提案は、第5世代移動通信システム(5G)および6Gネットワークに向けた日米両政府による45億ドルの初期コミットメントだ。将来の重要なデジタルインフラにおける中国の優位性に対する懸念を反映している」と筒井氏は述べている。
日米共同声明では、新疆ウイグル自治区や香港など、中国共産党による人権問題についても言及している。新疆綿の調達を避けるグローバル企業もあるいっぽう、中国国内では米国の人種差別を批判する動きがあることから、筒井氏は、人権をテーマにした双方の対立は今後も激化すると考えている。
筒井氏は、日本は人権問題についてはこれまでの「安全地帯」から一歩踏み出して、米国と同じく明確に中国の人権問題の批判をあらわにしている。さらに、「菅氏は米国におけるアジア人への暴力の増加にも言及したことは注目に値する」とし、アジアの大国としての独自の立場を示したと評している。
「日本は、中国との経済関係を悪化させることも辞さず、米国同盟関係を再確認した。米国は、今回の共同声明に基づいて、より具体的な行動を日本に求めてくるだろう」、「日本は、中国と対立した場合にどうするのかという質問から逃れることはできなくなっている。日本は、中国との競争の中で米国と協調しながら、北京とワシントンの間の緊張の高まりを制しながら、同時に自国の国益を守るという厳しい地形を乗り越えなければならない」と論じた。加えて、他のアジア諸国も日本と同じく、遅かれ早かれ同じ決断に直面することになるだろうと指摘している。
(佐渡道世)