チベットの光 (49) 望郷の念
ミラレパがとぼとぼと歩いていると、突如として見慣れたような、しかし完全には記憶にはないような所に辿りついた。彼が目を凝らして見ると、それはシャアツェ地方の実家であった。それは四つの柱と八つの梁でできていたが、すでに記憶は確かではなく、その前に立ってみると、それは無残にもボロボロになって見る影もない。子孫代々に伝わった大事な仏法のお経も水にぬれて破れ、三角形の畑も野草でぼうぼうとなっていた。
家には一人もいなかった。母は既になく、妹も糊口を求めて他の土地に移り、乞食となっていた。ミラレパはこの閑散とした状況を目にし、幼少のころから遭遇した事が、その刹那忽然と脳裏に蘇ってきた。彼は、年少の頃に母親と妹と別れ、長年会うこともなく、もう永別したのだ。彼は、再び母親に会うことができないことを思うと、心の中に無限の悲痛が沸き起こり、忍びきれずに大声で泣きだした。「母よ!妹よ!」
こうして叫んだ時、忽然として目が覚めた。彼は元々洞窟の中で修行していたのだ。彼が籠りはじめた頃、寝ることもなく打座していたが、今朝の黎明時には思いもかけず寝入ってしまい、夢の中で故郷に帰っていたのであった。彼が夢から醒めると、衣服には涙で大きな沁みができていた。彼は母を偲ぶとき、涙がとめどもなく流れ出てきた。
関連記事
スージー・ワイルズ米首席補佐官は乳がんを患っていた時期を振り返った。がんと懸命に闘う一方、負担の大きい首席補佐官の職務を担い続け、トランプ政権2期目の中でチームを率いながら最終的に回復したワイルズ補佐官の気づきとは
外反母趾は見た目だけの問題ではなく、足全体の使い方にも関わります。早い段階なら、足指やアーチを整える運動が、痛みや負担を和らげる助けになるかもしれません。
恐怖は心だけでなく、体にも影響を残すことがあります。頻尿、不眠、動悸と腎の関係を中医学の視点で解説します
「もう年だから」「今さら遅い」。そう思っていませんか?向上心は年齢に関係なく、誰もが持てるものです。日常の中で実践できる7つの方法で、もう一度「なりたい自分」を目指しましょう
一枚の桑の葉が蚕の体内で絹糸へと変わり、礼制や衣冠文化を支え、五千年の中華文明を紡ぎ出していく。小さな生命の神秘と悠久の歴史の源流、そして万物に宿る秩序と思索を描いた文明論エッセイ