チベットの光 (49) 望郷の念
ミラレパがとぼとぼと歩いていると、突如として見慣れたような、しかし完全には記憶にはないような所に辿りついた。彼が目を凝らして見ると、それはシャアツェ地方の実家であった。それは四つの柱と八つの梁でできていたが、すでに記憶は確かではなく、その前に立ってみると、それは無残にもボロボロになって見る影もない。子孫代々に伝わった大事な仏法のお経も水にぬれて破れ、三角形の畑も野草でぼうぼうとなっていた。
家には一人もいなかった。母は既になく、妹も糊口を求めて他の土地に移り、乞食となっていた。ミラレパはこの閑散とした状況を目にし、幼少のころから遭遇した事が、その刹那忽然と脳裏に蘇ってきた。彼は、年少の頃に母親と妹と別れ、長年会うこともなく、もう永別したのだ。彼は、再び母親に会うことができないことを思うと、心の中に無限の悲痛が沸き起こり、忍びきれずに大声で泣きだした。「母よ!妹よ!」
こうして叫んだ時、忽然として目が覚めた。彼は元々洞窟の中で修行していたのだ。彼が籠りはじめた頃、寝ることもなく打座していたが、今朝の黎明時には思いもかけず寝入ってしまい、夢の中で故郷に帰っていたのであった。彼が夢から醒めると、衣服には涙で大きな沁みができていた。彼は母を偲ぶとき、涙がとめどもなく流れ出てきた。
関連記事
正月明けに動けないのは、怠けではなく、心のメンテナンスのタイミングかもしれません。【こころコラム】
ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手が自身のInstagramに投稿した、愛犬「デコピン」の動画と写真が、いま世界中で大きな反響を呼んでいる。
ネオンのように鮮やかなピンクが森に舞う、オーストラリア固有のピンクロビン。写真家の情熱と偶然が重なり捉えられた奇跡の瞬間が、自然の驚きと喜びを静かに伝えます。思わず笑顔になる一篇です。
毎日見ている舌に、体からの重要なサインが隠れているかもしれません。色や形、舌苔から読み解く中医学の知恵と、現代研究が示す健康との関係をわかりやすく解説。
150ドルの美容液より、鍋に浮かぶ一輪の花――中世から人々の肌を支えてきたカレンデュラが、なぜ今も通用するのかをひもときます。