【医学古今】

体のだるさに鍼灸治療

もしあなたが体のだるさを訴えて病院を受診しても、ほぼ無視されるでしょう。というのは、体のだるさは病気ではなく、病気の付随症状でしかないからです。もし一通りの検査をしても何の異常も見つからなかった場合、恐らく治療の必要はないと言われるでしょう。こんな時、漢方や鍼灸の治療が非常に有効です。

 漢方医学は病名そのものより体質を重視し、病名が分からなくても体質を判断したうえで、適切な治療を施すことができます。漢方医学の理論から見ると、体のだるさは気虚、血虚、気欝、湿滞などの体質的な要因によって引き起こされていると考えられます。患者さんの身体に現れた関連症状と診察によって得られる症候を合わせて分析し、だるさを起こす体質要因を判断できれば治療を施すことができます。

 かつて40代の女性を治療したことがあります。この患者さんは、皮膚と鼻、目にアレルギー症状があり、更に生理不順、冷え症、足の浮腫み、肩こり、高脂血症などの問題がありました。その他、「いつも体がだるい」と訴えていました。これに対して漢方理論にそって診察した結果、「肝脾不足、気血虚弱、水湿停滞」という体質であると判断しました。漢方と鍼灸で暫く治療した後、彼女の諸症状は殆ど消え、ただ、ほんの少し肩こりを感じる程度にまで体質が改善されました。

 その後、この患者さんは体質維持のために、定期的に鍼灸治療を受けています。ある日、治療に来院した彼女は体のだるさを強く訴えていました。聞いてみると、最近になってパソコン作業が多くなったため、疲れていることが分かりました。「労則気耗」(労すれば即ち気が消耗される)という理論から考えれば、過労による気虚の状態が起こっていると判断しました。これに対して、気血を補うために、気海、足三里、三陰交、太衝などのツボに鍼灸を施しました。治療が終わると、患者さんは「身体が軽い」とさかんに言って喜んでいました。患者さんも私も鍼灸療法の素晴らしさを実感したのです。

(漢方医師・甄 立学)

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