【党文化の解体】第3章(3)

(2)平常時の国民に対する洗脳宣伝は、中央宣伝部が主導する

 英語の「Propaganda」(プロパガンダ、宣伝)という言葉は、洗脳、欺瞞の意味合いがあり、マイナスのイメージを持つ言葉である。だが、ナチスと共産党の辞書の中では、「宣伝」という言葉はプラスの意味を持っている。古くからこれまでの政治体制を調べてみても、ただナチスと共産党の体制にだけ、「宣伝部」という中央機関が設置されている。「改革開放」の政策を実施してから、中共は自らの国際的なイメージを考慮して、宣伝部の英語名称を 「Publicity Department」(広報部)と改称したが、その性格は少しも変わっていない。中共中央の直属機関である中央宣伝部(中宣部)は、中共が中国のマスコミと国民の精神を統制するための専門機関だ。

 ここ数十年来、中共は始終、イデオロギー領域の完全掌握を共産党の死活問題として重視してきた。中共は中宣部を通じて全国の世論動向を掌握し、「党」の意志を伝達し、国家の宣伝機関を通じて、民衆に対して洗脳宣伝を繰り返し実施して、全国民の思想を中共中央の意図に合わせて統一させてきた。中国の二千社余りの新聞社、一万種近くの雑誌、千社以上のラジオ・ TV 放送局、何十万というインターネットサイトは、すべて中宣部と各級宣伝部門により管理されている。

 周知のように、中宣部は自分の意志で動いているわけではない。それは中共中央の意志を自分の意志とし、中共集団の存続を目標とし、共産党の利益を根本的な利益としている。中宣部の仕事と言えば、一方では真実を封鎖し、他方では虚偽の事柄を捏造して真実にとって代えることだ。

 ではまず、中宣部がどのように真実を封鎖しているかを見てみよう。2002年6月、中宣部は新聞などの報道機関に禁令を発した。それは全部で35項目に上るが、以下はその一部にすぎない。

 「農村の税制改革を勝手に報道してはいけない」、「重大な疫病とその流行状況を重点報道したり、転載したりしてはいけない」、「安全管理に関わる重大事故について、随意に報道してはいけない」、「私営企業主の入党を報道してはいけない」、「各級党委を告訴する事件を報道したり転載したりしてはいけない」、「貧困状況や富豪の収入を過分に報道してはいけない」、「『希望工程』(貧困学生入学支援の民間寄付基金)の問題点を報道してはいけない」、「すべてのメディアは『封殺』という言葉を使ってはいけない」、「新聞、世論は4番目の監督力或いは権力だと言ってはいけない」、「間違った言論や異見を報道してはいけない」、「集中的に批判的な報道やマイナス面の報道を行なってはいけない」、「民族や宗教などの領域に関して、随意に報道してはいけない」などなど。

 中宣部は、毎年各省市に向けて最低でも100件あまりの通知あるいは禁令を発している。省、市の各級宣伝部は、毎年平均してメディアに230件を超える通知、禁令を発しており、中でも、上海市、広東省、四川省、山東省、湖北省、湖南省、河南省には禁令が特に多い。これらの省市の宣伝部が毎年メディアに向けて発する各種の通知と禁令は310件を超えている。つまり、これらの地域のメディアは毎点xun_鼬盾フ禁令を受け取っている計算だ。

 メディアに対する統制を強化するため、中宣部は新聞検閲協調チームを設け、中央と地方の主要メディアの動向を監視し、定期的に中央指導層に報告している。中央から地方まで、各級の宣伝管理部門あるいは新聞管理局は、大量の 「報道審査員」を雇って、メディアの配信する文章や映像などの「政治問題」を監視させている。中宣部の新聞管理局が審査責任を負っている出版物は、新聞だけでも100種余りに達する。

 「中国は大きいから、報道禁止されたって、それ以外に報道できる事件がまだたくさんあるじゃないか」と言う人がいるかもしれない。しかし、中共は 、「一点の問題を見つければ、他のことをすべて無視して攻撃する」習癖があり、その一点の問題を無限に拡大することもできる。党は好ましくないすべての言論に「問題がある」というレッテルを貼る。このような禁止令は、内容が曖昧で規則もなく(例えば、「むやみに評価してはいけない」、「過度に宣伝してはいけない」、「間違った言論と不正確な観点を報道してはいけない」)、人々に惑わしをもたらしていると同時に、メディアに携わる人々は、もしかしたら地雷原を踏むのではないかと、常にこれらの禁止令に恐怖を感じており、自身の安全のために自ら枠を設定して違反にならないように自己制御し、自ら自分の報道を検閲するようになっている。最終的に検閲をパスした報道は、すでに「政治的に正確」なものばかりで、何ら読むに値しないものになっている。

 中宣部は真実の報道を規制すると同時に、別の「真実」を作り上げて庶民を騙し、国民に虚構的な満足感や安定感を与えて、党の生存を守っている。「和解(※1)、反腐敗、愛国、小康(※2)、五分野の一位(※3)、三つの代表(※4)、八栄八恥(※5)、学習、強化、成績、高く持ち上げる、一里塚、先進性、闊歩前進、偉大な勝利…」などのような党文化を宣伝することにより、国民を中国の現実から隔離させようとしている。失業者や出稼ぎ労働者の惨めな境遇、家を強制撤去された市民、汚職と腐敗、官商の癒着、警察と闇勢力との結託、生態環境の深刻な悪化、道徳の墜落、悪化する一方の人権状況など、民族の生存を深刻に脅やかす社会の現実を完全に国民の視野から隔離させ、あるいは恣意的に粉飾処理して、「発展途中の問題だから、更なる発展により解決されるしかない」とごまかしている。

 報道の自由は、思想の自由及び自立した判断の根源だ。中宣部の各種禁止令と制限によって、すべての報道が中共によって検閲され、民衆は真相を知ることができないため、独立した思考をすることができない。人々は、時々刻々と中共党文化の中にどっぷりと浸かっており、その宣伝情報を受け入れ、党文化の思考回路に沿って思考し判断することしかできない。時間が長くなるにつれて、人々はこの状況を常識と認知し、党文化に洗脳されたことをまったく自覚できなくなる。
 

「事件の真相→党の必要な情報→加工改造→中央テレビのニュース→愛党」。どんなに恐ろしい事件であっても、統制されたメディアに加工されたら、すべて党の賛美歌になる(挿絵=大紀元)

(※1)中共が2004年に発表した各階層間で調和の取れた社会を目指すというスローガンのこと。
(※2)1979年に_deng_小平が提唱したことばで、「やや余裕のある」まずまずの生活レベルのこと。
(※3)中共中央宣伝部が1992年から行っている精神文明に関する優秀作品選出活動。五分野:演劇、テレビドラマ、図書(社会科学)、理論的文章(社会科学)、成果の著しい省・市等の中共宣伝部。
(※4)前国家主席・江沢民が2000年に発表した思想。中国共産党は(1)中国の生産的な社会生産力の発展の要求、(2)中国の先進的文化の前進の方向、(3)中国の最も広範な人民の根本的利益、の3つを代表すべき、とするもの。
(※5)胡錦濤・国家主席が2006年に提唱した中国共産党公式の新しい道徳規範かつ仕事、行動、態度の方針の通称で、「8つのやるべきこと、8つのやってはいけないこと」

 (続く)