(Scinern/Creative Commons)
【医学古今】

アレルギー性眼瞼炎の鍼灸治験

アレルギー性疾患にはさまざまな種類があり、アレルギー性眼瞼炎(がんけんえん)もその一つです。

 最近、脊柱管狭窄症で鍼灸治療を受けている70代の女性が、急に両眼の瞼が痒くなり、擦ったら赤くなって少し腫れてきました。眼科を受診して点眼剤を使用するも良い効果が得られず、「鍼灸で直りませんか」と尋ねてきました。

 アレルギー性眼瞼炎は鍼灸治療の適応症ですが、体質に関わる問題なので、すぐ効果が得られるかどうか不安がありました。しかし、彼女の強い希望で治療を始めました。

 漢方医学の理論では、目は肝臓に強く関係し、更に「五輪説」により分類すれば、眼瞼は脾臓に属します。つまり、眼瞼炎は肝臓と脾臓の機能に関わる病気です。彼女の顔色、舌、脈を診察すると、その体質は「肝血不足、脾虚湿滞」でした。

 そこで、肝臓と脾臓の機能を改善するために、肝兪(かんゆ)と脾兪(ひゆ)などの背部兪穴、太衝(たいしょう)と太白(たいはく)など肝経と脾経の原穴、湿の代謝を改善するために陰陵泉(いんりょうせん)、三陰交(さんいんこう)、眼局部の循環を改善するために太陽(たいよう)、攅竹(さんちく)などのツボを選んで鍼をし、更に太陽と三陰交に灸頭鍼(鍼の尾にモグサをかけてお灸する方法)を行い、週1-2回治療を施しました。

 1回目の治療後は1日ぐらい痒みが消えましたが、2回目の治療後、翌日には眼が開けられなくなるほど瞼が腫れ上がりました。彼女は驚き、このまま続けて大丈夫かと心配して診察に来ました。私の判断では、これは邪気が排出される現象であり、このまま治療を続けるべきだと説明しました。

 3回目の治療後、「眼からたくさん膿が出ました」と話してくれました。彼女は今度も非常に驚きましたが、「膿」が出た後、眼瞼の痒みも浮腫みもすっきりして良くなりましたので、大変喜び安心もしたようです。念のためにもう1回同じ鍼灸を施し、眼瞼炎の治療は終了しました。

 「膿」であるかどうか直接確認できませんでしたが、私の推測では、膿というより目垢ではないかと思います。いずれも邪気が排出された現象だと考えられます。

 

(漢方医師・甄 立学)

 

関連記事
現代人に潜む健康リスク「口呼吸」。睡眠や集中力に悪影響を及ぼす可能性があり、改善することで多くの健康効果が得られます。簡単にできる鼻呼吸への切り替え方法もご紹介。
ジーンズ選びのポイントを徹底解説!耐久性、デザイン、生地の組成など、長持ちするジーンズを選ぶためのガイドをお届けします。
タンパク質が高齢者の健康に重要な理由とは?骨や筋肉を守るための摂取方法と、おすすめの食材を解説します。
新しいCOVID-19の変異株「エリス」は、アメリカで主流株となり、感染が広がっていますが、症状は以前のオミクロン株と似ており、公衆衛生へのリスクは低いとされています。また、エリスに加え、新たな変異株BA.2.86も追跡中です。現行のワクチンがエリスやその他の変異株に効果を発揮するかが注目されています。
朝の太陽光で視力を守ろう!専門家が教える、目の健康を維持するための簡単な習慣と効果的なトレーニング方法をご紹介。