<心の琴線> 心をほぐした瞬間
私の兄が訪ねてきた時のことだ。兄は突然、叔父から引き継いだ工場を売却したいと言いだした。ビジネスはとてもうまくいっているのに、なぜ売りたいなんて?私が驚いた顔をすると、兄はため息をついた。「毎日、会社の雑事に追いたてられる生活がいやになった。今は、海外を旅しながら、長年の夢だった随想録を完成させたいんだ」彼はとても疲れているようだった。
「お兄ちゃんはまだ43歳でしょう。それなのに、もうリタイアしたいなんて・・・。ちょっと早すぎるのじゃない?」と私は冗談を言ったが、兄の望みに反対はしなかった。お金は十分あるし、休息することは悪くないと思ったのだ。
その後しばらくして、兄はとうとう工場を売り払ったと私に告げた。私はおめでとう、とお祝いの言葉を述べ、兄がいつ海外へ旅立つのかと聞いた。すると、兄は「海外に行くのはやめたよ」と言う。
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