2021年2月9日、世界保健機関 (WHO) の専門家国際チームは中国湖北省武漢市を訪問し、調査について報告会見を行なった。ピーター・ベン・エンバレク氏と梁万年氏、およびマリオン・クープマンス氏が会談する。(HECTOR RETAMAL/AFP via Getty Images)

WHO調査団、ウイルス武漢研究所発生説を否定 米国務省報道官「中国発生以外はまずない」

世界保健機関WHO)調査団は、2019新型コロナウイルス急性呼吸器疾患(COVID-19)のウイルスが中国科学院武漢ウイルス研究所(WIV)から漏洩した可能性は「極めて低い」と発表した。ウイルス起源に関する同調査団の最新報告が中国当局による不審な声明を支持する内容となったことで、世界各地の独立科学者等の多くが驚きの声を上げている。

ニューヨーク・タイムズ紙が報じたところでは、2021年1月下旬から2月上旬かけて複数国の科学者14人で構成される世界保健機関の調査団が、12日間にわたり中国湖北省武漢市の生鮮市場や研究所、また武漢市疾病予防控制センター(中国疾病預防控制センターの地方参加部局)を訪問・調査した。その結果、同調査団は冷凍食品の物流によりウイルスが人間に拡散した可能性も否定できないとして、国外発生説を主張する中国保健当局の説に含みを持たせる発言を行った。

しかし、中国以外の諸国の科学者等は、依然としてその可能性に懐疑的な見解を示している。NBCニュースが伝えたところでは、世界保健機関の調査団を率いるピーター・ベン・エンバレク博士は、「初回調査の結果としては、中間宿主種を介した感染経路が最も可能性が高いと考えられる。さらに深く研究する必要があり、具体的な対象を絞った調査が必要である」と述べている。

エンバレク博士はまた、中国科学院武漢ウイルス研究所からウイルスが漏洩して「人間集団にウイルスが拡散した可能性は著しく低いため、今後の研究でこれを仮説とすることは推奨できない」と説明している。

米国国務省のネッド・プライス報道官の発表によると、今回の調査団による報告書が完了した後、米国は世界保健機関の調査結果を独自に検証する構えである。

プライス報道官は記者会見で、「少なくともこれまでのところ、米国だけでなく国際社会が必要としている情報すべてを中国側が開示したとは考えられない。この種のパンデミックを二度と発生させないためにも、すべての情報が必要である」と述べた。さらに、「科学以外の要素により誘導された可能性のある結論を直ちに受け入れるのではなく、米国は提携諸国・機関と協力しながら自国の情報機関が収集・分析した情報に基づき判断する」と発表している。

調査は「進行中」と述べたエンバレク博士の発言によると、世界保健機関はウイルスの中間宿主となった動物を未だ特定していない。CNBCニュースが報じたところでは、中国国家衛生健康委員会の専門家で構成されるチームの中国代表・梁万年氏は、科学者等は「真剣な協議と非常に綿密な調査に基づき、ウイルスの中国科学院武漢ウイルス研究所発生説を排除した」と述べている。エンバレク博士の発表によると、今回の調査により新情報は得られたが、感染拡大の経緯を大きく塗り替えるような事実は発見されなかった。

CNBCニュースが伝えたところでは、エンバレク博士は、「2019年12月上旬に発生したウイルスの感染経路を理解するという点で、以前の状況を大きく塗り替えるような事実は見当たらなかったと」とし、「理解の深化、より詳細な情報の入手という点では、明らかに価値があった」と説明している。

しかし、2019年12月に武漢市で初めて公式に症例が確認される前に、ウイルスが武漢市で流行していたことを示す証拠は見つかっていない。

BBCニュースが報じたところでは、今回の世界保健機関調査団の一員であるピーター・ダザック博士は、「中国では力を尽くして調査に当たった。今回の結果を考慮すると、どうしても国境に目が向く。東南アジア全域の他地域ではほとんど監視が行われていない」と述べ、新型コロナウイルスの起源に関する焦点が東南アジアに移る可能性があることを示唆した。

ダザック博士は、「中国は非常に広大な地域だが東南アジアも非常に広大である」とし、「武漢華南海鮮卸売市場のサプライチェーンは広範にわたるため、物資が他国から輸入され、中国のさまざまな地域からも輸送されている。この経路を追跡するには、ある程度の作業が必要になる」と話している。

米国は、中国共産党が世界保健機関の調査結果を操作した可能性に対する懸念を引き続き表明している。

プライス報道官は記者会見で、ジョー・バイデン米政権が国際連合の専門機関である世界保健機関の脱退通知の撤回を表明したことを強調しながら、「一般的な問題として米国が世界保健機関に加盟していれば、全体的に当国は同機関で物事が正常に進捗するのを支援できる。当国が脱退すれば、同機関が意図通りに機能するように支援することができない」とした。

「この場合は新型コロナウイルスの起源の解明についてである。合理的な人間なら、新型コロナウイルスが中国以外から発生したとする説を主張することはまずないだろう」と報道官は付け加えた。

(Indo-Pacific Defense Forum)

関連記事
アメリカ議会下院特別委員会は新型コロナの最終報告書を発表。中国の責任や対策の教訓を指摘している
アメリカで依然としてエリス変異株が主流である中、科学者たちは新たなCOVID-19変異株「ピロラ」(BA.2.86)に注目しています。ピロラは多くの変異を持ち、免疫回避の可能性が指摘されていますが、感染力は低い可能性もあります。現在のワクチンや治療法が効果を持つことが期待され、今後の監視が続けられます。
中国で新型コロナウイルスの強力な変異株KP.2とKP.3が急速に拡大。多くの医療従事者も感染し、病院は満杯だという。学校での集団感染リスクも増加。個人防護の強化を求める声が高まっている
WHOは、世界中で新たな感染の波が起こっていると警告した。各国政府に対し、新たなワクチン接種キャンペーンを開始するよう要請している。
ミネソタ州最高裁判所は6対0で、州の新型コロナウイルス緊急事態宣言は合法であるとの判決を下した。