サングリー空港で歓迎の旗を振るフィリピン軍人(Photo credit should read NOEL CELIS/AFP via Getty Images)

フィリピンが中国企業との空港建設契約を解除 国家安全上の懸念する声

フィリピンの首都マニラ南部に位置するカビテ州は先月末、中国企業に与えていた空港建設の利権の撤回を明らかにした。同州知事によると、申請書類に「複数の欠陥」があるためだという。

契約総額が100億ドルにのぼる同建設計画は2019年、中国の大手建設会社「中国交通建設股份有限公司(CCCC)」とフィリピンの航空関連会社MacroAsiaが合弁で参画し、マニラ湾に浮かぶサングリー空港を大型の国際空港に改修する予定だった。

東南アジアを中心に展開するBenarNewsの1月27日の報道によると、Jonvic Remulla州知事は声明のなかで、「合弁契約の書類の欠陥」を原因として述べていた。また、プロジェクト自体は中止しておらず、「2021年10月までに、より資格のあるパートナー」と共にプロジェクトの再開を検討しているという。

報道によると、サングリーポイント国際空港の建築プロジェクトは、マニラ湾の既存空港の拡張と大規模な埋め立てを含み、ニノイ・アキノ国際空港の混雑緩和を目的としている。サングリーポイント国際空港は、最終的には利用者数1億人を超え、アジア太平洋地域で最も大きい空港の1つになると予想されている。

この大規模プロジェクトに対して、フィリピン国内からは懸念の声も上がっている。米メディア「The diplomat」によると、昨年9月、フィリピン海軍のジョバンニ・バコルド中将は、国際空港の建設はマニラ湾を守る重要な海軍基地の移転を伴うため、国家全体を危険にさらす恐れがあると指摘した。

バコルド中将は、南シナ海に面するサングリーポイント海軍基地の移転は、首都マニラを攻撃にさらすことと同じだと述べた。「その基地はマニラ湾の入り口を守っており、マニラ湾は国の重心だ」と同氏は言う。「マニラが崩壊すると、国家全体が崩壊する」

中国交通建設は昨年8月、南シナ海の紛争海域において人工島の建設と砂利の除去に従事しているため、アメリカの制裁対象となっている。

一方、ドゥテルテ大統領は中国交通建設がアメリカの制裁対象になっても、プロジェクトを続けると発表した。スポークスマンのハリー・ローク氏によると、ドゥテルテ大統領は「私たちは自由で独立した国であり、中国からの投資家が必要なので、アメリカ人の指示には従わないだろう」と述べた。

Remulla知事はロイターの取材に対し、この決定は制裁とは関係ないと語った。

(翻訳編集・文亮)

関連記事
急増するサイバー犯罪に対処することを目的として、フィリピン政府と民間部門はサイバー耐性の向上や訓練プログラムといった一連のサイバーセキュリティイニシアチブの実施に乗り出した。
[マニラ 19日 ロイター] - 強力な台風に襲われたフィリピン中部のボホール州で、少なくとも72人が死亡した。アーサー・ヤップ州知事が19日明らかにした。犠牲者数はフィリピン全土で100人を超えている。 ボホール州はロボック川などフィリピンの人気観光地を抱える。ヤップ知事は、現在の死者数は一部の報告に基づいたものにすぎないと述べ、実際はまだ増加する可能性を示唆。フェイスブックのアカウントを通じて
南シナ海で座礁しているフィリピン海軍の老朽軍艦に物資を補給する比民間船舶の作業を妨害した中国は、その後同座礁船の撤去を要求したが、2021年11月下旬、フィリピン国防相は同座礁船を撤去しない意図を表明した。
2021年7月にフィリピンの地理空間分析会社が発表した報告書によると、中国籍の船舶が投棄した海上廃棄物によりフィリピンの環礁と諸島周辺の脆弱な生態系に大きな損害が発生した。
南シナ海や台湾海峡で中国共産党(以下、中共)の脅威がエスカレートしている中、元フィリピン海軍副提督ロンメル・ジュデアン(RAdm. Rommel Jude Ong)氏は、米政府系ボイス・オブ・アメリカ(VOA)とのインタビューで、フィリピン、台湾、日本は防衛面で密接な関係にあると述べ、3カ国が協力して対中国防衛政策を展開することを呼びかけた。