対立深まる豪とGoogle ニュース使用料支払いの義務化めぐり
米検索エンジン大手Googleとオーストラリア政府がニュース掲載の有料化をめぐり、対立を深めている。ジョシュ・フライデンバーグ(Josh Frydenberg)豪財務相は1月24日、ニュース使用料の支払いが「避けられない」と巨大IT(情報技術)企業に警告した。
オーストラリア政府はGoogleやFacebookなどの主要デジタルプラットフォームに対し、記事使用料を報道機関に支払うよう義務付ける法案の可決を目指している。同国政府は広告収入の減少で経営不振に陥ったメディアを支援するため、2年前から同法案の制定に取り組んでいる。ユーザーがニュースを閲覧することで、GoogleやFacebookは収益を得ているため、Googleなどはニュースを提供した報道機関に使用料を支払うべきだと同国議員らが主張している。
Googleは、法案が成立した場合、オーストラリアで「Google検索」の提供を停止すると反発した。
オーストラリア政府は昨年12月9日、GoogleとFacebookなどのIT企業にニュース使用料の支払いを義務付ける法案「ニュースメディア契約法」を議会に提出した。現在、上院の委員会が同法案を審査しており、2月12日に結果を報告し、その後、議会採決を行う予定だ。下院と上院での審議・可決後、連邦総督の承認を得て法案が成立する。
Google、検索機能の停止で豪政府脅す
オーストラリアの規制当局は、巨大IT企業がメディア業界でシェアを奪い、完全な民主主義体制を脅かす可能性があると考えている。この法案は、財務省の下部機関であるオーストラリア競争・消費者委員会(以下「ACCC」)が、3年余りにわたる調査を経てまとめたものだ。
ACCCの調査によると、オンライン広告費は、53%がGoogleに、28%がFacebookに、残りの19%が他のメディア企業に流れることが明らかになった。
GoogleとFacebookは、オーストラリア政府に法案を取り下げるよう働きかけたが、大きな進展はなかった。Googleオーストラリアのメル・シルヴァ(Mel Silva)社長は1月22日、オーストラリア上院に対し、「もしこの法案が法律になれば、オーストラリアでのGoogle検索の提供を停止するしか選択肢がなくなるだろう」と明言した。
シルヴァ社長は「これは脅迫ではなく現実だ」とし、法制化の方向になれば、Googleがオーストラリアでサービスを提供し続けることが経済的に不可能になり、Googleの検索エンジンの運営モデルとは相容れず、「危険な」前例になりかねないと主張した。
同氏はまた、Googleが2019年にオーストラリアで48億豪ドル(約3583億円)の巨額の利益を上げたが、法人税は5900万豪ドル(約47億円)しか支払っていなかったことも認めた。そのうち、43億豪ドル、つまり収益の大半はオンライン広告によるものだった。
Googleの発言を受けて、オーストラリアのスコット・モリソン(Scott Morrison)首相は「オーストラリアで何ができるかのルールを決めるのはオーストラリア次第だ。受け入れてくれれば、大歓迎だ。脅しには応じない」と強硬な姿勢を貫いている。
ブルームバーグのコラムニストのデビッド・フィクリング(David Fickling)氏は、1月25日付の寄稿文で、Googleの親会社であるAlphabet (アルファベット)がネット広告市場で独占的な支配力を濫用していないかどうかについて、複数国の規制当局が調査していると述べた。Google が疑惑を否定しているが、Googleによるオーストラリアへの脅しは、それ(影響力の濫用)を裏付けるものとなっていると指摘した。
ビッグテックの影響力~国に挑む力
オーストラリア政府の統計によると、オーストラリアの伝統的なメディア企業の広告収入は2005年から現在まで、75%減少している。最近では複数のメディア企業が収益悪化を理由に、倒産や従業員の解雇を余儀なくされている。
また、米下院司法委員会の反トラスト小委員会は昨年10月に発表した調査報告書の中で、米メディア業界は過去20年間で収益の70%を失い、そのほとんどがGoogleやFacebookなどの巨大IT企業に流れていると指摘し、IT大手にニュースの利用料を払わせる法律を制定するよう政府に求めた。
2019年3月、欧州委員会(EC)は著作権法の改正案を採択し、第11条では、Google、Bingなどのニュース収集サイトは、記事の抜粋についても、免責不能な使用料を支払わなければならないとしている。翌4月には、フランス競争当局(FCA)がGoogleに対し、ニュース使用料の支払いをめぐって同国のメディア各社と交渉するよう命じた。
今年1月21日、Googleフランスはフランスメディア283社で構成する「一般報道機関連合(APIG)」とニュースの有料化で合意に達した。
1月25日付のフィナンシャル・タイムズ(FT)中国語版のオピニオン記事では、ニュース使用料の支払いをめぐり、Googleは米国やEUからの規制圧力に屈したが、比較的経済力の弱いオーストラリアに歯向かうことを選んだと分析している。
「インターネットの誕生から半世紀が経過した今日、巨大な影響力を持つハイテクの巨人らは、ついに主要国の政府に挑戦し始めている」とした。
(翻訳編集・王君宜)