米、メコン川観測情報サイトを運営開始、上流で放流しない中国に対抗

米政府が一部の資金を提供したメコン川中国名は湄公河)水資源観測情報サイト(https://monitor.mekongwater.org)は12月15日、正式に運用開始し、同川のモニター観測情報を発信し始めた。米国務省の高官は、同サイトの運営でメコン川水資源情報の透明性が一段と高まると示した上で、昨年以降、カンボジアなどの下流地域の各国が干ばつに見舞われたにも関わらず、中国当局は上流にあるダムを放流しなかったと批判した。

米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)などによると、米シンクタンク、スティムソン・センター(The Stimson Center)と環境調査会社のアイズ・オン・アース(Eyes on Earth)は15日、オンライン会議で同サイトについて紹介した。

スティムソン・センターのメコン川ダム観測プロジェクト責任者、ブライアン・アイラー(Brian Eyler)氏は、中国当局がメコン川上流の瀾滄江で大規模なダムや発電所を建設しているにもかかわらず、下流地域の各国に情報を提供せず、住民の生活に不便をもたらしたと批判した。

アイラー氏は、観測情報サイトで、メコン川地域の降水量、中国側のダムの貯水および放流状況、下流地域の各観測点の川の水量をチェックする方法を紹介した。「衛星画像と遠隔観測技術によって、利用者はメコン川地域の水資源情報の実況配信を見ることができる」と同氏は述べた。

デービッド・スティルウェル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は会議で、アイズ・オン・アースの4月の研究レポートを引用し、「昨年、メコン川下流地域の各国が干ばつに見舞われたのに、中国当局はダムの水を下流の各国に放流しなかった」と糾弾した。スティルウェル氏によると、この状況は今年も続いており、中共ウイルス(新型コロナウイルス)の感染拡大によって、状況はさらに悪化している。

同会議に出席したカンボジアのポウ・ソティレアッ(Pou Sothirak)元産業・鉱業・エネルギー大臣は、「カンボジアのメコン川の水位は2年連続で史上最低となった。水位はほぼ3分の2まで下がった。この影響で今年の漁獲量は約7割減った。漁業関連輸出も84%縮小した。カンボジアの人々は一段と苦しい生活を強いられた」と訴えた。

タイ政府担当者も、カンボジアと同じ現状を話した。

一方、スティルウェル氏は「中国当局は今後、より多くの情報を提供すると約束したが、情報の質はまだ低い」と中国の対応が不十分であることを批判し、今後もこの問題に取り組んでいくと約束した。

同氏は、観測情報サイトの運営開始によって、メコン川上流の変化などがわかると強調した。東南アジア各国の政府に対して、サイトから得た情報で、共同で対策を立てるよう呼びかけた。

中国外務省の汪文斌報道官は12月14日の記者会見で、米政府が一部出資したメコン川観測情報サイトについて、「中国は断固として、悪意ある挑発行為に反対する」と述べた。

報道官によると、中国当局は11月末、メコン川流域の各国に瀾滄江の水文情報を公開する情報サイト「瀾湄水資源合作信息共享平台網站」を立ち上げ、12月14日に運営を始めた。

中国人ネットユーザーが使用する検索大手、百度で検索した結果、関連報道が表示されるが、同サイトは見つかっていない。グーグルで検索しても、同様の結果となった。

メコン川は全長4000キロ。チベット高原に源流を発して、中国の青海省と雲南省を通り、ミャンマー、ラオス、タイ、カンボジアとベトナムを経て、南シナ海に注ぎ込む。東南アジア最長の河川として、各国の漁民約6000万人の生計に関わっているとされる。

(翻訳編集・張哲)

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