メルボルンの中国人街、2020年8月撮影(WILLIAM WEST/AFP via Getty Images))

豪当局、中共統一戦線組織の幹部を逮捕 内政干渉防止法に違反

オーストラリア当局は、中国共産党政府と共謀して政治活動に介入したとして、自由党の元議員候補であるディ・サン・ドン(Di Sanh Duong、中国名・楊怡生)容疑者を、外国勢力による内政干渉を防止する法律に基づき起訴し、逮捕した。

​65歳のドン容疑者は、中国共産党の対外的な影響を行使する組織・統一戦線の前線組織である中国和平統一促進会のオーストラリア支部理事を務めていた。

和平統一促進会は、米国では外国代理人として登録されている。

現地紙シドニー・モーニング・ヘラルドによると、情報機関ASIOと連邦警察は1年間の捜査の後、ドン容疑者を​外国政府によるオーストラリア国内への干渉の準備をしていたとして逮捕、起訴した。最高で10年の拘禁刑が言い渡される見通し。

オーストラリアでは2017年、中国共産党から献金を受けていた野党議員(当時)が、南シナ海の係争地について親中共発言を行なっていたとして、外国勢力による腐敗問題に関心が高まった。その後、オーストラリア議会は外国スパイ活動や内政干渉を阻止するため、国家安全保障法改正案を提出し、2018年6月に可決した。

​シドニー工科大学 (UTS) の馮崇義准教授によれば、この干渉禁止法はオーストラリアの中共寄りの気運をそいでいるようだという。「同法が成立して、中国メディアはかなり抑圧された。また、中秋節や旧正月など中国政府支援の大型パレードも、ここ数年中止されている」フェン准教授は、ラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に対して答えた。

「チャイナタウンの雰囲気も変わり、中国人コミュニティ全体にも根本的な変化が起きている」と付け加えた。

オーストラリアでは、統一戦線に関与していると疑われる人物が政治干渉を図っている。

10月、自由党から立候補した庄永新(ピーター・ジャン)氏は、現地の中国語新聞に、中国系住民からの支持を求める広告を掲載した。2005年にオーストラリアに移住したジャン氏は以前にも、南シナ海や北アジア、オーストラリアに対して北京の影響力拡大を支援していると報道されている。

中国共産党の影響を考える有志組織「オーストラリア価値守護連盟(AVA)」のファン・フージャン氏は、ピーター・ジャン氏のような人は、北京からの指示に基づいているかもしれないと語った。「統一戦線は長期的な戦略であり、オーストラリアには多くいる」「中共の浸透工作によりオーストラリアは多くの打撃を受けたが、初期に目を覚ました国でもある」と述べた。

いっぽう、オーストラリアのすべての地域が中共の工作に徹底した対策をとっているとは考えにくい。南東部に位置するビクトリア州政府は2019年、一帯一路に参加する中国との合意に署名した。

オーストラリアに亡命した中国人で中共浸透工作に詳しい呉楽宝氏は、「この合意は、中国共産党の人権記録や台湾政策に対する批判を黙殺させる目的で、中国共産党が海外に行っている工作だ」と最近のRFAのインタビューで語っている。

2019年2月、オーストラリア当局は中国の著名な億万長者・黄向墨氏の市民権申請を却下した。北京とのつながりが理由であるという。

オーストラリア価値守護連盟によれば、黄氏は2014~17年までオーストラリアの中国和平統一促進会と、2016~20年までオセアニア中国和平統一促進連盟それぞれの主席を務めた。オーストラリアの政治政党に190万ドル近くの献金をしていた。

同連盟は、「黄氏は北京に手伝い、オーストラリアの民主主義と政治の基本原則を侵害していた。申請却下は正しい判断だ」と声明で述べた。

オーストラリアの作家で公共倫理学の教授でもあるクライブ・ハミルトン氏は、著書『サイレント・インベージョン(Silent Invasion)』で、同国への中国の影響力について描いている。たとえば、現地政治家への接近、学問の自由の侵害、評論家の脅迫、中国諜報機関による情報収集、オーストラリア政府の政策に対する抗議行動を組織して動員するなど。

ハミルトン氏の著書は北京からの報復の恐れて、3社の出版社が発刊を拒んだ。

ロイター通信によると、2019年2月、大規模なサイバー攻撃が発生した。オーストラリア通信電子局の調査で、中国国家安全部と関連したハッカーによる攻撃であることが明らかになった。同年5月の連邦議会議員総選挙への内政干渉を試みたとみられる。

(翻訳編集・佐渡道世)

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