【紀元曙光】2020年10月27日

人倫(じんりん)という言葉がある。

▼人の道(ひとのみち)と言ったり、道徳と呼んだりもするが、やはり人倫という折り目正しい漢語で表現したい時もある。人は、人倫にもとる行為をしてはならない。社会は、人倫にもとる行状を追認してはならない。それが大原則なのだ。

▼ただし人は弱い。その弱さからくる愚かさのため、過ちを犯すこともある。昔の武士なら切腹であるが、今は逆に切腹してはならない。過ちを犯した自身にしっかり向き合い、迷惑をかけた人々には心から謝罪して、新しい自分として生きていくしかないのだ。

▼東京オリンピックでのメダル獲得が期待された水泳選手が、妻子ある身でありながら、他の女性と不倫関係にあったという。刑法上の犯罪には当たらない。ドーピングなどの競技ルールにも違反していない。イメージダウンによって、スポンサー企業には多大な迷惑をかけた。そのことにより、今後、民事裁判で叩かれるかどうかは知らないが、ともかく彼は警察に連行されることなく通常の生活を送れるのである。

▼ただし彼は、人倫にもとる行為をした。その事実から逃げることはできない。ご意見は多々あろうから、小欄の筆者も一つの意見としてしか申さないが、彼はアスリートとしての水泳を一切やめて、ハローワークで職を探し、普通の勤め人になってもいいのではないか。「競技で結果を出すことが第一だ」という風潮に、筆者は違和感を覚える。

▼病気を克服した池江選手がカムバックするのとは全く違う。きちんと罰を与え、本人もそれを受けて、別の人生を歩んではどうだろう。

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