中国初の国産旅客機C919、来年の就航が困難 専門家「米サプライヤーに強く依存」
米国専門家はこのほど、中国初となる国産旅客機「C919」の2021年の就航が難しくなっていると指摘した。C919の飛行制御システム技術や部品などは、欧米各社、特に米企業に強く依存している。米政府などは、中国当局が欧米の航空技術を軍事転用する可能性が大きいとして、技術提供などについてさらに慎重な姿勢を示している。
中国当局は当初の計画で、C919が2014年に初飛行をし、16年に納入を開始すると予定していた。実際のところ、初飛行は17年5月に実施された。また、当局は、納入を21年に延期した。C919は中国初の国産大型ジェット旅客機だ。
米ボイス・オフ・アメリカ(VOA)9月14日付によると、航空リサーチ会社エンダウ・アナリティクス(Endau Analytics)の創業者、シュコア・ユソフ(Shukor Yusof)氏は、21年にC919の就航は難しいと指摘した。理由は、C919の生産は、欧州および米国企業による第三者サプライヤーに強く頼っているためである。「新型コロナウイルスのまん延が長く続いていれば、C919の納入がさらに延期される可能性が高い」と同氏は語った。
習近平指導部は2015年、製造強国を目指す国家戦略「中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)」を発表した。中では、航空機産業を10の重点分野の1つに位置付けた。当局は、C919を含む航空機国産化を通して、国内外に国力を誇示する狙いがある。
中国紙・中国青年報は今年6月、C919の国産化率が60%近くに達し、現在100%を目指していると報道した。
米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の中国問題専門家、スコット・ケネディ(Scott Kennedy)氏はVOAに対して、中国航空機の完全な国産化について、不可能であるとの認識を示した。
ケネディ氏は「C919は名義上、中国の国産旅客機となっている。しかし、この旅客機が飛行するために使われている技術と設備はすべて欧米各社のものだ」と述べ、特にC919の製造を支えているサプライチェーンは米国のサプライチェーンであるとした。
中国国有の中国商用飛機(COMAC)は、C919の前に、小型ジェット旅客機「ARJ21」を開発・製造した。ケネディ氏によると、C919はARJ21と同様に、エンジン、降着装置、タイヤなどの機器や部品は欧米各社から輸入し、中国国内で組み立てている。ARJ21の設計は、米航空機製造会社、マクドネル・ダグラス(現在ボーイング)が開発・製造した双発ジェット旅客機MD-80シリーズに基づいている。
C919が採用したLEAP-1Cエンジンは、米ゼネラル・エレクトリック(GE)と仏サフラン(Safran)の合弁会社であるCFMインターナショナルが開発した。米GE・アビエーション(GE Aviation)がC919の主要航空電子機器システム、機上整備システム(OMS)、統合型航空電子機器(IMA)システムなどを提供した。
米パーカー・ハネフィン(Parker Hannifin)傘下のParker Aerospace社はC919の航空機油圧システムを、米ハネウェル(Honeywell)は同旅客機の飛行制御システム、車輪とブレーキシステム、ナビゲーション・システムなどを供給。米ハミルトン・サンドストランド(Hamilton Sundstrand)はC919の電源システムを、 米モーグ(Moog)はC919の高揚力装置を提供。
ケネディ氏によれば、中国当局は2008~09年にC919の他の潜在的なサプライヤーを探し始めた。しかし、中国側が近年、民間企業の技術を活用して軍事力を強化する「軍民融合戦略」を推進しているため、欧米諸国の政府は、C919への技術提供が軍事転用される可能性があるとして、サプライヤーの各社に対して禁輸措置を検討している。
今年2月、米政府はCFMインターナショナルに対して、中国向けLEAP-1Cエンジンの輸出禁止を検討していると報じた。中国メディアの当時の報道によると、中国航空工業発展研究センターの上級エンジニア、陸峰氏は「今、エンジンの供給を停止されるのは、釜の底から薪を抽くことに等しい」と述べた。
米市場調査会社のティール・グループ(Teal Group)のリチャード・アブラフィア(Richard Aboulafia)副社長は、「欧米企業が開発したエンジンと航空電子機器システムがなければ、中国は航空機を製造できない。中国の最大課題は飛行機を作ることではなく、エンジンと航空電子設備を開発・製造することだ。機尾に(中国の)国旗マークを貼り付けるだけでは無意味だ」と厳しく指摘した。
(翻訳編集・張哲)