日本など8カ国、対中包囲網を構築「孤軍奮闘の現状を変える」 

日本を含む8カ国の国会議員と欧州議会議員は6月4日、中国共産党に対抗するため、超国家組織「対中政策に関する列国議会連盟(Inter-Parliamentary Alliance on China、IPAC) 」を立ち上げた。

IPACは5日、オーストラリア、カナダ、ドイツ、日本、ノルウェー、スウェーデン、英国、米国と欧州議会の議員が出演した2分間のビデオで世界に向けて、組織を紹介した。動画は数分で数十万回の再生回数を記録し、関心の高さをうかがわせた。ルクセンブルク、リトアニア、チェコ、オランダが参加を表明した。

IPAC広報担当者サム・アームストロング氏は「民主主義国および自由な世界に対する最大の脅威は共産主義者主導の中国である」「連盟は各国国会議員が、より強固な対応が必要であると自国政府に明確に伝えるために存在している」と、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に答えた。

公式発表によると、IPACの主な活動は、中国の状況を監視し、参加議員が適切で協調的な対応を構築するのを支援し、中国問題に積極的かつ戦略的なアプローチを構築することを支える。その活動は5つの分野に分かれている。1. 国際的なルールに基づく秩序の保護

2. 人権の擁護 3. 貿易の公平性の促進 4. 安全保障の強化 5. 各国国家の主権保護だという。

同グループの議員らは声明で、次のように語った。「共産中国に立ち向かうとき、多くの国は孤軍奮闘していた。民主国家は自国の利益を追及して、中国を切り離すことなく、民主国家の価値や原則に目をつぶってきた」

「中国共産党は自国で市民を抑圧している一方、世界範囲で影響力を拡大させ、民主主義国家の制度や価値観を脅かしている。中国共産党のもたらす脅威がますます深刻化している今、すべての国が力を合わせて中国共産党に抵抗し、戦略と手順を調整するべきだ」「中国共産党からの挑戦は一政府や一党だけで対処できるものではない。国境および党派を越えた視点で戦略を立てる必要がある」

広報のアームストロング氏によると、党派と国を超えたプラットフォームを立ち上げる案は、わずか約6週間前に始まったばかり。IPAC結成は、中共ウイルス(新型コロナウイルス)の発生に対する中国共産党の対応、ウイルス初期情報の隠ぺいおよび情報発信した中国市民への弾圧、香港の国家安全法制の可決によって加速されたという。

IPACは、いかなる国も自国民の普遍的価値である人権の上に一党独裁を敷くことを許してはならないと主張した。

アームストロング氏は、民主主義国の国会議員であれば誰でもIPACへの参加を申し込むことができると述べた。それぞれの国では異なる主張の主要政党から一人ずつ参加する二人の「国家チーム」代表が設けられている。日本からは中谷元議員と山尾志桜里議員が務める。 

米国チームを率いるのは、民主党のボブ・メネンデス上院議員。共和党のマルコ・ルビオ上院議員。ルビオ議員はIPAC結成の発表に合わせて声明を発表し、「共産中国とその野望にどう対処し、世界を再構築するかが課題だ」と述べた。メネンデス議員は、「この時代が直面する外交政策が課題だ」と述べた。

共産党政権の長年の反体制派である中国の魏京生氏はVOAに対し、IPACは「中国共産党が国連などの国際機関を含め、国際的に影響力の範囲を拡大している。こうしたなかで、超国家および議会組織が対中国政策を立てる意義は大きい」と述べた。

魏氏は、中国の民主主義活動で、中国の刑務所で政治犯として20年近く服役していた。 1997年アメリカに亡命した。IPACには人権担当としてメンバー入りしている。

長年にわたり中国人権問題に関心を寄せるマイアミ大学の政治学教授ジューン・トゥーフェル・ドレイヤー氏はVOAの取材に、IPACは「多くの可能性を秘めている」とした。「どのように中国に国際ルールを守らせるかにかかっている。これまで多くの政府が中国とのビジネスに注力し、人権問題から目を背けてきた。一部の「専門家」は経済を理由に、対中強硬姿勢は『中国よりも私たちに与える損失が大きい』などの暴言を吐いてきた」と述べた。

IPACの主要発起人の一人で、元イギリス保守党首のジョージ・イアン・ダンカン=スミス卿はこう指摘する。「中国共産党との戦いには目的ある一致があってこそ課題に立ち向かうことができる」

(編集・佐渡道世)

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