ウイルス対応で覇権狙う中国共産党 専門家、質の悪さで「マイナス評価」
世界中の人気の観光スポットや行楽地は、中共ウイルス(新型コロナウイルス)対策の影響を受けて、観光客の人影がまばらになっているところが多い。いっぽう、ウイルス流行の渦だった中国では、学校やオフィス、レストランなどが徐々に再開され始めている。
米トランプ大統領は、当初、中国共産党政権のウイルス対応を支持していた。しかし、流行が米国にまで拡大して少なくとも8万人もの人々が死亡し、ウイルス起源や情報の封鎖が明るみになってくると、米国は、中国の初期対応の不備を追及し始めた。さらに、世界保健機関を利用した情報操作も批判している。
世界保健機関(WHO)の最高意思決定機関である世界保健総会(WHA)の総会初日の5月18日、トランプ大統領はホワイトハウスの記者会見で「WHOは中国の操り人形」と厳しく批判した。また、テドロス事務局長に当てた書簡を公開し、中国との癒着体制の事例を並べて、「30日以内に本質的改善が見られなければ、現在暫定的に実施している資金拠出停止を恒久化する」と警告した。
いっぽう、中国の習近平主席は、総会冒頭あいさつで、「開発途上国におけるコロナ対応と経済・社会開発を支援するため」と前置きして、向こう2年間でWHOに対して20億ドルを拠出する用意があると述べた。これは世界で最も拠出金を出してきた米国の2018、2019年の過去2年間を合わせた8億9300万ドルの2倍以上にあたる。
ポンペオ米国務長官も17日の会見で、中国側が「研究者や疫学者が必要とする重要な情報を拒絶し続けている。重要なことは、それ(情報の隠ぺい)がまた起こる可能性があるということだ」と述べている。
中国政府は、ウイルスの発生源とされる武漢市内およびP4ウイルス研究所の国際機関による調査を拒否している。しかし、「協力的で透明性がある」と主張している。
中国政府および中国企業は、各国がウイルス対応に追われる非常事態期間を狙い、「マスク外交」と呼ばれる医療品の積極的な輸出や寄付を通じて、関係を強化し、中国共産党への支持を集めようとした。「マスク外交」を世界的に展開することで、「世界におけるウイルス戦のリーダー」としての地位の確立を狙った。
しかし、中国が輸出したマスクや防護服、検査キットの劣悪な品質が現地メディアにより取りざたされている。
アリババ共同創業者の馬雲氏は、「私の考えでは、この流行はすぐに終わらないだろう。技術的な突破、イノベーション、医学研究によって消滅することができる。長期的な準備が必要だ」とし、「ワクチンが開発されれば、中国が世界に解決策を示すと期待される」と述べた。
いっぽう、戦略国際問題研究センターの上級顧問ボニー・グレイザー氏は、中国共産党が引き起こした初期対応の不備と情報削除について、「世界はその誤りを忘れていない」とVOAに述べた。
「中国の医師の警告を黙殺し、WHOを掌握し、完全な透明性のある情報を世界の他の国々と共有することを拒んだ。これらのことは、中国の評判にマイナスの影響を与えると思う」とグレイザー氏は述べた。
「世界の見本は台湾」
米国高官の一部は、本土に最も近い民主的な政府を持つ台湾は、個人の権利を損なうことなく、ウイルスに効果的に対応した好例だとしている。ワシントン拠点のハドソン研究所上級研究員で退役准将のロバート・スポルディング氏は、VOAの取材に応じた。
スポルディング氏は、「台湾政府が国民に情報を提供し、透明性を高め、迅速に行動しているのを見ると、台湾は実際に新型コロナウイルスによく対応しており、世界の模範となっている」と述べた。
台湾は大陸をつなぐ空路と海路を素早く規制し、迅速に新規感染例を特定し、民間の協力および公金、軍部を投入してマスクを増産させた。企業や学校の部分的再開にも、感染対策を明文化して通知した。
ポンペオ長官も18日、SNSで同様の書き込みをして、台湾の政策の成功を支持している。「台湾が最も成功したコロナ封じ込め対策を実施できたのは当然だ。透明性のある、活気に満ちた、革新的な民主主義国家は、独裁的な政権よりも常に迅速かつ効果的にパンデミックに対応できる」と書いた。
18日に開催されたWHO年次総会は、国連内における中国の外交的圧力により、今回も台湾の出席が妨げられた。台湾外交部の呉釗燮部長は、WHO事務局が中国政府の圧力に屈し、2300万の台湾人の健康権を無視し続けているとして、抗議文書を送る。また、出席を働きかけたのは日本、米国、英国、ドイツだと、欧州メディアのユーロ・ニュース出演時に述べている。
ロイター通信によると、欧州連合(EU)とオーストラリアが推し進める中共ウイルスの起源と感染拡大に対する独立調査の要求についての決議案が19日、WHAに提出される。報道によると、116カ国・地域以上の協賛が集まり、可決される見通し。
(翻訳編集・佐渡道世)