【ショート・エッセイ】
泥より出づる芙蓉のように
我が国最初の勅撰集である『古今和歌集』に、蓮を詠んだ一首「蓮葉(はちすば)のにごりに染まぬ心もてなにかは露を玉とあざむく」がある。
歌意は、「蓮の葉は、泥水から生えて少しも濁りに染まらない清らかな心をもっているはずなのに、どうして葉の上に置く露を玉と見せかけて人を欺くのか」というもの。要するに、聖なる花である蓮が「人を欺く」というところに諧謔を込めたひねり歌なのであるが、技巧を求めて言葉遊びに流れた感もあり、あまり趣味の良い歌ではない。
作者は誰かと見てみると僧正遍照とある。なるほど平安六歌仙の一人、あの遍照(遍昭とも書く)かと思い当たれば、『古今和歌集』の序文の一つである仮名序を読んだことのある人であろう。
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