【ショート・エッセイ】漱石と天麩羅そば

故・司馬遼太郎さんのエッセイ『街道をゆく・閩のみち』の中に、夏目漱石の小説『坊ちゃん』についての、おもしろい指摘がある。

 その概要は次の通り。温泉浴場で八銭の湯賃をだす上客には、湯屋からの接待として「天目に茶を載せて出す」と漱石は書いているが、これはどういうことなのか。巻末の注釈には通常「天目とは天目茶碗のこと」と解説されている。中国江南の窯で作られるすり鉢のような抹茶茶碗であるが、それにしても茶碗に茶を「載せて出す」という日本語は、どうもおかしい。

 そこで司馬さんの推理は、漱石の書いた天目とは、茶碗ではなく、おそらく茶碗を乗せる「天目台」であろうということだ。

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