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徳を植える

その昔、先祖代々裕福な家があった。その家の主人は、年を取ってから男の子をもうけた。主人は品格を持つ人になって欲しいと願い、子供にを意味する「浄本(じょうほん)」と名付けた。浄本は器量がよく、賢く見えたため皆に可愛がられた。

 ある日、遠い高山の上で、一人の士が慧眼(けいがん)で世の中を見まわしていた。すると、浄本の家の上空が、瑞祥(ずいしょう、めでたいことが起こる前兆)を意味する紫金色の光に覆われている。彼は、急いでそこに駆けつけた。

 主人は道士の訪問を喜び、手厚くもてなした。浄本は道士を見ると、無邪気に笑った。道士は浄本を見ると、将来、浄本が自分に弟子入りすることが分かり、主人に次のように告げた。「浄本は生まれつき愚かで劣っているので、17歳までしか生きられません。しかし、私について『道』を学べば、彼の運命を変えることができるでしょう」。それを聞いた主人は、怒って道士を追い出した。道士は離れる際、「やむを得ない時には必ず浄本に『道』を学ばせてください」と、何度も主人に言った。

 道士が言った通り、成長した浄本は気性が激しく、四書五経には少しも興味を示さない。の話も耳障りだと言わんばかりの態度で、一方高価な物には目がなかった。浄本が15歳になったある日、主人は道士の話を思い出し、数人の占い師を呼んで浄本の運命を占わせた。すると、皆一様に「浄本は17歳までしか生きられない」と言うのだった。驚いた主人は、急いで浄本を道士のもとへ連れて行き、丁重に詫びを入れて、浄本を道士に弟子入りさせた。

 道士は毎日説法したが、何日経っても聖人の言葉や道、徳の話が浄本の頭に入らない。そこで、道士は苦心に苦心を重ねて、ある方法を考え出した。

Photo by Ivars Krutainis on Unsplash

 ある日、道士は鉄鋤を持って、草も生えないような砂漠に浄本を連れて行き、穴を掘って「あるもの」を埋めた。道士の手には何もないのに何を植えているのかと、浄本は道士に聞いた。道士は、「私は徳を植えているのだ」と真剣な顔で答えた。「徳にも種がありますか?」と、浄本が聞くと、道士は「もちろんある。徳の種は善だ。あらゆる善の念は異なる色を持つ。たとえば、『浄本が一生懸命に道を修めることを願う』という念だ」と答えた。道士は功能を発し、浄本にその念を見せた。金色の光が道士の手のひらに光り、それはとても美しかった。道士はその善の念を掘った穴に入れて埋めた。

 赤、橙、黄、緑、青、藍、紫など、あらゆる善の念が異なる色の光を放ち、とても美しい。浄本の心は徐々に静まっていった。「心が善良であれば、念も善良になり、人はさらにすばらしいものを持つことができる」と、浄本は悟った。そして、浄本は道士と一緒に、この貧弱な土地で徳を植え続けた。

 ある日、浄本は疑問が生じた。「世間では作物が植えられた後、雨露が必要になりますが、植えられた徳には、何をやったらいいのですか? ここは、何年も雨が降っていないのですが…」道士は、「もちろん天道(てんとう、太陽または日輪)を注ぐのだ」と述べ、手を振りかざして神通力を発した。すると、この土地は天道の働きで絶え間なく演化し、改善していった。土地は肥沃になり、活気に溢れ、よい香りのする花や霊芝(万年茸)の生い茂る森になった。その後、一層の澄み切った天が現れ、中にはさまざまな清らかな生命が存在した。これらの生命は皆、浄本に向かって微笑み、ひざまずき礼をしているようであった。

 浄本は立ったまま禅定に入り、元神ははるか遠くまで飛んで行った。最後に、この場所の上に一つの大きくて重厚な「徳」という文字が現れ、浄本はその文字の中に飛び込んだ。たった一つの文字なのに、中は果てしなく広くて遠い。どの層の天に上っても、万物は徳を必要とする。生命の場合は、相当大きな徳を備えてから、その層の天にとどまることができるのだ。

 徳がこんなにも貴重であるということを、浄本は悟った。

(翻訳編集・李頁)

 

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