【紀元曙光】2020年4月28日

「的屋(てきや)殺すにゃ刃物は要らぬ。雨の三日も降ればいい」。

▼映画『男はつらいよ』のワンシーン。旅先の安宿にいる車寅次郎が、窓の雨に溜め息をつきながら、こんな台詞をつぶやく。的屋とは、お祭りや縁日などで商売する露天商のこと。寅さんの生業である。

▼寅さんが啖呵売(たんかばい)する物は、どこで仕入れたのか不思議だが、バッグや雑誌や化粧品など多種多様である。いずれにせよ露天なので、雨が降ったら商売にならない。意外だが、豆腐屋の節子がマドンナの回を除いて、寅さんが食べ物を売っていた回はなかったように思う。

▼寅さんだけを語っていたいが、そうもいかない。大変なのは日本だけではなかろうが、「バイト殺すにゃ」などとは冗談にも言えない深刻な情況が続いている。自粛の必要性は分かっている。休業しろ、とは言うが、いつまで辛抱すればいいのだろう。働いて稼がなければ、人は生きていけない。結果として、病死と同じことにもなりかねないのだ。

中共ウイルスの感染拡大防止が最優先であることは、言うまでもない。だが、それによる経済への大打撃が引き起こした「症状」は、倒産、廃業、閉店、解雇、失業、内定取消、中途退学など、いずれも重症と言わねばならないものばかりだ。

▼行政は遅い。今は、なんとしても自分で生き延びよう。特に、小欄をご覧の若い方へお話しするつもりで、以下を書く。心を強く持つのだ。あなたの人生の計画は数年停滞するかもしれないが、今は耐えて、いつか必ず再起を図ってほしい。あなたは若い。それが何よりの宝ではないか。

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