Pixabay

「目標は人に言わない」 ゴールまでの一歩と錯覚 

「3キロダイエット目標達成のため、毎朝5キロジョギングするぞ」

 「中国語をマスターするため、ヒアリング、ライティングをそれぞれ1時間、毎日することにしたんだ」

 「会計士になるため、僕は夜中2時まで勉強しようと思ってね・・・」

 人は目標を打ち立てたら、つい周囲の友人や肉親に話したくなる。立派な目標を公言すると、周りの人はあなたを褒めて、いい気分になってしまい、それだけでゴールに一歩前進したかのようにあなたは錯覚してしまう。

(Sham Hardy/Creative Commons)

 米国の音楽家デレック・シヴァーズ氏は、米講演主催団体TEDで、「目標は人に言わない」をテーマとした演説を行った。シヴァーズ氏は、目標を人に言ってしまうと、逆に目標達成の可能性と、到達点を引き下げてしまうと述べ、これは1920年代から心理学上、すでに実験で実証されていると説明した。

 一般的に「目標を人に話すことは、応援され、達成までの励みになってよい」と考えられている。しかし、1926年、心理学者のカート・ルーウィンはこれを「代償行為」と呼び、1933年には心理学者ウェラ・マーラーが「他の人に認められると、心はそれが現実のように感じる」と指摘している。

 シヴァーズ氏は2009年に行われた最新の心理学実験例を取り上げた。被験者164人は全員、個人の目標を紙に書き、半数が目標を公言、のこり半数は口外しなかった。被験者は45分間、目標に達するための作業をするように言われ、かつ好きなときに止めて良いと告げられた。

 口外しなかった被験者は45分間使い切って作業し、後の質問で「まだまだゴールには遠い」と感じていたという。一方、目標を公言した人たちは、約30分過ぎたころに作業をやめてしまっていた。「ゴールにずいぶん近づいていた」と後の質問に答えたという。

 目標に達成するには、段階的な痛みや辛さをかみしめて、成長していくなかで実現する。ゴールまで人は満足を感じないはずだが、目標を人に話して認めてもらうと、心理学上で言う「社会的実感」に変わり、もう実現したかのように心は勘違いしてしまう。そのため、必要な努力を行う動機を失ってしまう。

 「もしどうしても目標を人に話さなければならないなら、満足を感じないような伝え方をすればいい」とシヴァーズ氏はアドバイスを送る。例えば「来月のマラソン大会で入賞するため、毎日5時間走りこむよ。さぼっていたら、活をいれてくれる?」など。

 さてあなたは次回、目標を決めたら、人に言う? 言わない?

(佐渡)

関連記事
白キクラゲやレンコンをはじめ、免疫力を高める10の食材を紹介。伝統医学と現代科学が推奨する抗炎症効果で、肺を潤し冬を快適に過ごす方法を提案します。
新たな研究により、男性における自閉症の発症リスク上昇には、Y染色体が関与している可能性が示されました。男性では自閉症が女性より約4倍多く見られる一因として、Y染色体が自閉症リスクを特異的に高めていることが明らかになっています。
朝食のタイミングを調整することで、2型糖尿病の血糖値管理が改善する可能性があることが新しい研究で明らかに。運動と食事のタイミングが血糖値に与える影響を探ります。
神韻芸術団2025年日本公演間近、全国42公演予定。伝統文化復興を目指す公演に観客の支持と絶賛の声が相次ぎ、チケットも記録的な売上を上げている。
食品添加物「カラギーナン」が健康に与える影響についての新しい研究結果を紹介。インスリン感受性や炎症の悪化と関連があり、摂取を控える方法も提案します。