(Romainguy/Creative Commons)
<心の琴線>

息子が直してくれた、嫉妬心という名の病

息子が重度のアトピーと診断されたのは、彼が1歳のときだった。

 強烈なかゆみのために、自分で何度も掻きまくった息子の顔はパンパンに腫れ上がり、足の皮膚は血だらけとなった。「どうして私の子だけがこんな目に」と思いながら、泣き叫ぶ息子を抱いて、私も毎日泣いた。医師の出す薬も効かず、息子の夜泣きも止まらなくて、私は限界に達していた。

 ある日、知り合いのおばさんからこんな話を聞いた。「子供は、母親の体に溜まった毒を受け持って生まれてくると言うわよ」 

 その言葉が私の胸に響いた。だとすれば、息子は私の身代わりになって、この小さな身体で私の「毒」を引き受けて生まれてきてくれたのか。現代医学で言えば、遺伝やアレルギーの一言で片付けられてしまうもの。その「毒」の存在は私には見えないけれど、体の奥に潜んでいた私の中の悪いものって何だろう、と真剣に考えた。

 ふと、私が小さい頃の出来事を思い出した。いとこのお姉さんと私と妹の3人でお風呂に入っていた時のことだ。その時、彼女は私よりも妹ばかりを可愛がった。大好きだったお姉さんがちっとも私の相手をしてくれず、彼女への敬慕の念はしだいに憎しみへと変わっていった。お風呂から上がると、私は大泣きして親たちに訴えた。「お姉ちゃんが、私をいじめた」

 その後、お姉さんが大人から叱られたのかどうかは、記憶にない。でも、今思えば本当に悪いことをした。そして、私は自分が嫉妬深いということを発見したのだ。そういえば、私の嫉妬が原因で、新婚当初はしょっちゅう夫婦ゲンカをしていたではないか。もしかしたら、それが私の長年の「毒」だったのかもしれないと思った。「そんな悪いもの、早く捨てなければ」と、心に固く誓った。

 その夜から、不思議なことが起こった。一晩に10回は下らなかった息子の夜泣きが、2回ほどに減った。少し眠れるようになった私は体力が回復し、産後ずっと続いていた腕の炎症も一週間で消えた。その上、あれほどひどかった息子のアトピーが、少しずつ改善し始めたのだ。半年後、息子の肌はつるつるになった。薬も使わずに、こんなに簡単に難病が治ってしまったことに驚いた。

 中国では親の徳も業(ごう)も、子へ積み重なるという言い伝えがある。それが本当なら、息子は私が持っていた嫉妬心という「毒」を浄化してくれたのだろうか。「私の心の病が息子のアトピーの原因でした」なんて言ったら、きっと医師から笑われるだろう。

 つらい思いをさせちゃってごめんね、と私は心から息子に謝った。無邪気に遊ぶ息子は、そんなことお構いなし。時々、アトピーの名残がわずかに残る足首をボリボリと掻く。けっこうしつこい病だな、と思いながら、嫉妬という漢字を思い浮かべた。「女の石のような疾病」か。これはしつこいはずだ。まだ残っているかも知れない「毒」を出しきるべく、今も心の修行中である。 

(長江)

 

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