禅の効果?

アルツハイマー患者 日本庭園を見て落ち着く

静寂の中に独特の景観を織りなす日本庭園の思想が凝縮されたその美しい空間が、アルツハイマー患者を落ち着かせるという報告がある。ナショナル・ジオグラフィック・ボイスが伝えた。

研究を進めているのは、米ラトガース大学で造景学を研究する五島聖子教授(Seiko Goto)と、細胞生物学および神経科学の専門家カール・ハロップ教授(Karl Herrup)。

彼らは、ニュージャージー州の老人ホームにある32種類の庭園のうち、どれが好きかと老人たちに尋ねた。日本庭園の人気が高く、また庭園を眺めた老人たちの心拍数が低下したことから、アルツハイマー患者に対する効果についての調査が始まった。

(Pixabay)

科学者らは、別の老人ホームのユニットの一角に、小さな日本庭園を製作。アルツハイマー患者たちを招き、一週間に2回、15分程度その庭園を眺めてもらった。被験者となったのは、自分が誰なのかも分からないような重度の認知症を患う人たちだ。

すると、症状が悪化して奇声を発していた患者でも、庭を眺めると、とたんに落ち着きを取り戻すという現象が見られた。患者たちは笑顔を浮かべて、その日はずっと落ち着いていたのだ。五島教授によると、ある医師は、「薬は効き目が出るまでに時間がかかり、患者をぐったりさせてしまうので、庭園を見せた方が効果的だ」と話したという。

スズムシの記憶

ハロップ教授は、あるアルツハイマーの患者に現れた変化が非常に強く印象に残っていると話す。

それは、アルツハイマー患者たちが日本庭園を眺めていた時のこと。菊の花からスズムシの鳴き声が聞こえていた。10日後、患者たちが同じ庭園を訪れると、4人のうち2人が「スズムシはどこ?」と聞いてきたという。

この2人の患者は、庭園とスズムシの記憶をつなぐことができ、10日間もその記憶を保持していたのだ。ハロップ教授はその時、感動して「鳥肌が立った」と話している。

認知症を患う人がますます増えている昨今、同研究がさらに進められることを期待したい。

(文・郭丹丹)