米の台湾チェーン店に中国から「悪質ないじめ」 蔡英文総統の入店で
中南米歴訪中の台湾蔡英文総統は、経由地米ロサンゼルスにある台湾系コーヒーチェーン「85℃」に立ち寄ったところ、中国のネットユーザーは同チェーンが「台湾独立派企業」だと批判し、不買運動を呼びかけている。一方、中国「東南早報」によると、福建省泉州市場監督管理局が同市内の「85℃」店舗に立ち入り検査を行ったと報じた。専門家は「中国の悪質ないじめ」と痛烈に批判した。
蔡英文総統は12日、滞在した米ロサンゼルスで、現地の「85℃」に立ち寄った。蔡総統はコーヒーを購入するほか、台湾籍の従業員とも接した。この際、従業員が総統に「85℃」キャラクター・マーク付きの抱き枕にサインを求めた。蔡総統はサインし、記念写真の撮影にも応じた。
これに対して、中国メディアが在米の中国社団連盟組織主席・鹿強氏の話を引用し、この抱き枕は「事前に用意した贈り物」だと報じた。しかし、「85℃」はのちに発表した声明文で、キャラクター付きの抱き枕は店内で多く見られると疑惑報道を否定した。一方、「両岸が一つの家族」や、1992年に中国が主張する「一つの中国」という合意とされる「九二共識」を支持すると表明した。
一部のネットユーザーは「85℃」は台湾独立を擁護しているとし、不買運動を呼びかけている。
2004年に設立された「85℃」は現在、中国の主要都市で店舗を構えており、積極的に中国に進出している。
騒動は85℃の中国国内の店舗にも飛び火した。中国メディア「東南早報」の報道によると、中国泉州南安市市場監督管理局が15日、中秋節や中共建国記念日を控え、食品の安全を守るという理由で、「恒例」の検査を行った。管轄地域内にある10軒のパン屋、泉州水頭店舗を含む店舗内検査を進めたと報じている。しかし、報道内容と掲載された5枚の写真は、すべて「85℃」に関するものだった。
15日夜、中国の主要デリバリーアプリから「85℃」の商品が取り下げられた。同社台湾の公式ウェブサイトで16日、蔡英文総統の写真が貼られ、ハッカーに攻撃されたもよう。
台湾総統府、黄重諺報道官は15日、蔡英文総統の入店で、企業が「屈辱な声明の発表」まで追い込まれる事態に至るとは思わなかったと驚きを隠せなかった様子だった。自らのイデオロギーを国際企業に押し付けるのは「あるまじき行為だ」と厳しく非難した。
中国で食品事業などを展開する台湾企業が中国による圧力を受け、「一つの中国」を支持するとの声明を発表したのは少なくない。米国在台協会(AIT)の元理事長、リチャード・ブッシュ氏(Richard Bush)は16日に、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に応じ、今回、中国側の台湾企業への反発行為はきわめて「不合理」であり、中国の「悪質ないじめ」だと中国を批判した。
「本当に一つの家族なら、決していい家族ではない」と切り捨てた
(翻訳編集・柳雅彦)