米メディアCNBCは4日、米中貿易戦の本質が5G(次世代移動通信システム)をめぐる主導権争いだとの見解を示した(Getty Images)

5Gをめぐる米中の主導権争い 「中国の手に入れば世界を監視下に」

米国と中国は6日、互いに340億ドル相当の輸入品に対して25%の関税を上乗せする措置を実施し、貿易戦に突入した。米メディアCNBCはこのほど、米中貿易戦ぼっ発の背景には、世界的な経済効果が12兆3000億ドル(約1365兆3000億円)に及ぶ5G(第5世代移動通信システム)産業をめぐる米中の主導権争いがあるとの見方を示した。中国共産党政権が5Gの主導権を手にすれば、世界各国の政府と国民が中国当局の監視対象になる可能性が高い。

5Gによる経済効果

5G通信システムの特徴は「超高速」、「大容量」、「同時多接続」「低遅延」などが挙げられる。同システムの普及で、人工知能(AI)技術、車の無人自動運動、ロボット技術など本格的なサービス化が加速化するとみられる。

現在、2020年に5Gの商用化を目指して、国際電気通信連合(ITU)や3GPP(各国主要通信事業者や通信機器メーカーが参加する国際標準化団体)が5Gの国際規格標準化を進めている。

3GPPは6月14日、5Gの初版の標準仕様策定を完了したと発表した。

米通信大手のクアルコムが昨年1月に発表した調査によると、5Gの普及で、2035年までに世界各国の小売り、流通からエンターテインメントに至る様々な業界に、最大12兆3000億ドルの経済効果をもたらされる。

「米は国防上で5Gを必要とする」

米CNBCは6日の報道で、米中貿易戦の本質は、5Gをめぐる米中の主導権争いにあるとの見方を示した。現在中国通信大手の中興通訊(ZTE)や華為技術(ファーウェイ)が5G技術開発において、欧米同業との主導権争いを強化し、その影響力を高めようとしているとした。

現在進められている標準化の主導権を掌握すれば、将来の世界5G通信システムや重要なハイテク産業、世界経済まで支配下に置くこともありうる。

欧米各国は、中国当局が指導権を握ることに強く警戒している。5Gネットワークが中国に支配されると、西側諸国における中国当局のスパイ行為が激増し、国家安全保障の脅威になる、と懸念している。

今年5月、米中通商交渉で中国訪問を控えた米国のロス商務長官はCNBCの取材に対して、5Gについて「トランプ政権の重要な政策の1つだ」と明言した。長官は「ビジネスの面だけではなく、国防上の理由でも、米国は5G技術を必要としている」と、中国を念頭において話した。

トランプ米大統領は3月12日、シンガポール半導体大手のブロードコムによる米クアルコムへの買収について、国家安全保障上の理由で禁止する命令を下した。ブロードコムは中国企業と近い関係があるとみられ、中国当局がブロードコムを通じて、クアルコムの技術を不正に入手する恐れがあるとされた。

一方、クアルコムは他の米同業とともに、5Gの国際規格標準化の策定において、リーダー的な役割を果たしている。

対米外国投資委員会(CFIUS)は3月、クアルコムがブロードコムに買収されば、開発研究などへの投資が減り、「イノベーション向上ができないため、クアルコムが弱体化するだろう」との懸念を示した。また、CFIUSは、クアルコムの弱体化を隙に、中国当局が支援する企業が5G標準化の主導権を奪うとした。

米の不満

 

トランプ政権が発動した追加関税措置の対象の大部分は中国のハイテク製品だ。中国企業による知的財産権侵害に対する米政府の強い懸念を浮き彫りにした。

中国当局が掲げた製造強国政策、「中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)」は、中国が5Gネットワーク、半導体産業、人工知能、自動運転技術などハイテク産業に対して、強力なバックアップ体制を実行していくと掲げた。

一方、米政府は複数回、中国企業のイノベーションや技術向上に反対していないと主張してきた。しかし、それは技術の窃盗や強制移転によって実現されるべきではないと、ロス商務長官は過去、中国のやり方に強い不満を示した。

また、ライトハイザー米通商代表(USTR)も6月米メディアに対して、中国当局による技術窃盗と強制的技術移転や、「中国製造2025」政策の下で当局の3000億ドル(約33兆3000億円)規模の補助金プログラムを批判した。

5Gで世界各国を監視か

米政府は、中国側が5Gの主導権を獲得することで、米企業の知財権侵害が深刻化する上、世界各国が中国のネット規制・検閲の対象になりかねないとしている。

ロイター通信の年初めの報道によると、中国当局の盗聴・監視を回避するため、トランプ政権は5Gネットワークの構築を急ぐ方針を打ち出し、同時に5G以外の通信システムの使用停止を模索し始めたと米政府関係者が話した。

中国共産党政権は2006年に、体制に不都合な情報や言論をブロックし、国民への監視を強化するのに「金盾」計画を展開し、ネット検閲システム「グレート・ファイアウォール」を起動した。中国ネット上では、3万人以上とされているネットポリスと、200万人以上のネット監視要員が、ネットユーザーらの書き込みに「反党・反体制言論がないか」と24時間目を光らせている。

トランプ米政権は、中国通信企業のZTEやファーウェイ、チャイナモバイルに対して厳しい姿勢を示している。

(翻訳編集・張哲)

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