2016年3月、二人の中国人旅行者がニューヨーク市内で「自撮り」している (Sorbis/Shutterstock.com)

中国大使館が米旅行を警告、ネットユーザ「じゃあ高官子女も帰国させたら?」

「米国は治安が良くない」。米首都ワシントンDCの中国大使館は中国人に向けて、米国滞在の危険性を警告し、渡航注意を喚起した。米朝貿易摩擦が激化するなか、このたびの渡航注意勧告は、政治的動機に基づく「報復」とみられる。中国ネットユーザーからは「米国にいる政府高官の子女も帰国させたら?」と辛らつな皮肉が相次いだ。

在米中国大使館は6月28日、公式ウェブサイトで、これから訪米する中国人に対して「公衆での銃撃と盗難の脅威、高額な医療費、税関の調査と押収、詐欺、自然災害」などを列挙して、注意を促した。

「米国の治安は良くない。銃撃、強盗、盗難が頻発している」「米国へ行く場合は周囲や怪しい人物に注意を払い、夜間は一人で外出することは避けるように」文章にはこう記されている。

在米中国人は疑問視「何も奪われていない」

いっぽう、在米中国人は、中国大使館の渡航注意の通知には疑問符を打つ。「米国に住んで数年たつが、犯罪に巻き込まれたことはない。安全だ」と、ツアーガイドである高さんは米政府系VOAの取材に答えた。

ボストン・マラソンのテロ事件を目撃したという現地の大学に通う中国人留学生は「いつもは安全であり、警察は非常に効率よく機能している」と語った。

中国ネットユーザーからは、大使館の発表は滑稽だとの意見があいついだ。「一般市民にはそれほど影響がない(訳注:中国人の米国ビザ取得は容易ではない)。アメリカにいる中国政府や企業幹部の子女に言ったら?」「高官親族は資金をアメリカに移してる。(渡航勧告するぐらいなら)子供、隠し子、家族全員帰国すれば?帰る時にアメリカにある預貯金も一緒に持ってきてね」「これは米中貿易戦の一つの攻撃であり、中国共産党の底なしに恥知らずな体質を示している」

中国共産党政府はかねてから、米国の銃犯罪に焦点をあて、「深刻な人権問題がある」と強調してきた。これは、チベットやウイグル、また法輪功や地下協会(クリスチャン)など中国国内における非人道的行為に目を向けさせないようにするためのプロパガンダの一環だ。

終着点の見えない米中貿易戦を見れば、このたびの旅行勧告は、中国当局が政治的な動機で、訪米旅行を抑制するために発表されたものと考えられる。しかし、中国外交部(外務省)はこれを否定している。7月3日、外交部報道官は定期記者会見で「夏休みが近くなり、米国渡航者が増加することに合わせて、海外での潜在的リスクについて国民に警告する義務がある」と説明した。

米国務省は6月中旬から、中国による米国の知的財産の盗用に対抗する措置として、中国人の米国ビザ審査を厳格化した。情報技術分野で研究する中国出身の学生ビザを短縮させ、米企業で上級職に就く予定の中国人の労働・研究ビザには、複数の米政府機関から許可を得ることを審査条件に加えた。

米国、中国人のビザ厳格化「中国製造2025」への対抗措置で

ドナルド・トランプ大統領は、中国からの輸入品500億ドル(5兆4500億円)相当に関税を課すと発表している。トランプ政権は最大4500億ドル(約50兆円)の輸入関税を課すことも言及している。7月6日には第1弾として340億ドル分への関税適用を始める。

(編集・佐渡道世)

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