ベトナム政府、フェイスブックに南シナ海の「誤表記」修正求める
ベトナム政府は7日1日、世界大手SNS・Facebookの広告スペースの地図に、南シナ海における係争中の群島が「中国領土」と表示されていたことから、Facebook側に抗議し、早急に変更するよう求めた。
ベトナムのメディア「ベトナム・エクスプレス」2日付によると、同政府はスプラトリー(南沙)諸島とパラセル(西沙)諸島について、誤表記であることを明確にするようFacebook側に伝えたという。
南シナ海はベトナムほか台湾、フィリピン、ブルネイ、ラオス、中国が領有権を主張する諸島や海域が複数重なる係争地域。
同局報道官は2日、Facebook側は地図表記について「政治的な事情ではない技術的なエラーがあり、いくつかの混乱が生じている」と釈明し、早急に問題を調査し、対応すると回答したという。
中国外交部(外務省)は定例記者会見で、このFacebookの表記問題について言及していない。
統計によると、ベトナムにおけるFacebookのユーザー数は6400万人で同SNS全体の3%、世界で7番目に利用者の多い国となっている。
現地メディア・ベトナム通信に答えたハノイ在住の小売業者によると、「ショックを受けている。出稿していた広告をすべて取り下げた」と語った。また、ほかの広告主も「誤った地図を支持できない」として一時的に広告を撤回したと報じている。
NGOメディア・アースライズは4月、衛星写真を基に、中国軍は南沙諸島に3つの前哨基地を置き、対駆逐艦および対空域弾道ミサイルシステムを備え、軍事拠点化していると報じた。ベトナム外務省は「ひどく主権を侵害している」として強く抗議してきた。
ベトナムでは最近、反中感情が高まっている。政府が進めている外国企業向けの沿岸部経済特区計画について、「中国企業のベトナム進出の足掛かりとなる」との危機感から、国民は計画に反対する声が高まっている。
抗議デモが6月の週末に2回行われた。抗議行動が全国各地に広がったため、ベトナム国会は経済特区に関する議決を10月に延期した。ベトナムで抗議デモを行なうことは、厳密には違法となっている。
ベトナム語のFacebookには、政権与党ベトナム共産党と中国共産党政府への不信感と怒りの声が集まっている。
米国の戦略国際研究所(CSIS)東南アジア担当マレー・ヒーバート氏はロイター通信の取材に対して「ベトナム政府は国民の反中感情を過小評価している」「多くの国民は、中国からベトナムの主権を守るための政府対応が不十分だと考えている」と分析を示した。
(編集・佐渡道世)