米国で2番目に大きな大学、孔子学院との契約を解除
米国で2番目の学生数を抱えるテキサスA&M大学の学長は4月5日、学内に設置する中国共産党政府との繋がりが強い組織「孔子学院」との契約の解除を決めた。中国側のスパイ工作組織であり米国の安全保障を脅かしていると主張する米議員らの警告に応じた格好だ。
最近、米国では上院下院の議員が超党派で、大学など教育機関に対して、孔子学院の閉鎖や警戒を呼びかける書簡を送るケースが増えている。テキサスA&M大学は、議員の警告に応じて契約解除を決定した初めての事例。
議員たちは一様に、アメリカの教育機関の監督外で、外国勢力が学生たちに政治的な影響力をもたらす危険性について、学校側に伝えている。テキサス選出のヘンリー・クーラー議員(共和党)とマイケル・マッカール議員(民主党)は4月5日、同州の学校4校に送った孔子学院の閉鎖を求めるとの共同署名付き書簡を公開した。
「私たちは、中国政府の支援を受けている孔子学院との契約終了を強く求める」、「この組織は、中国当局の諜報工作と政治目的のために活動しており、米国の安全保障を危険に晒している」と書簡には記されている。
テキサスA&M大学学長ジョン・シャープ氏はこの書簡を受けて同日午後、「両議員の判断や愛国心に疑念の余地はない。加えて、彼ら(孔子学院)は私たちの機密情報を入手することができていた。提案どおり、契約を解除する」と声明で返答した。
地元紙ダラス・ニュースによると、テキサスA&M大学広報部は3月に2議員から書簡を受け取ってから、学内調査を行っていたという。このたび、2キャンパスに設置していた2つの孔子学院との契約を解除する意向を改めて明かした。
現在、米国では孔子学院は100あまりの大学に設置されている。孔子学院によると、中国政府からの資金援助について「なければ運営は難しく、歓迎している」とした。また、組織は語学と文化教育に限定され、政治宣伝はないと疑惑を否定している。
一方、中国国務院の説明によれば、孔子学院は「核心価値である社会主義を基礎とした教育を広める」、「中国の夢を宣伝する」を目的としており、政治色の強い機関であると言える。
2月13日、米連邦議会上院の情報委員会の公聴会で、クリストファー・ライFBI長官が、米議会でスパイ活動の疑いで孔子学院を捜査していると述べた。
フロリダ州選出のマルコ・ルビオ上院議員(共和党)は同月、州内にある孔子学院を設置している4つの大学と1つの高校に、「反米の外国勢力」である孔子学院を排除するよう呼びかける書簡を送った。
ボストン・グローブ紙によると、マサチューセッツ州選出のセス・モールトン下院議員(民主党)も3月、同州の40あまりの大学に書簡を送り、孔子学院の閉鎖や新規開校をしないよう求めた。
日本政府は実態把握に遅れ 担当部署なし
2017年に孔子学院について調査報告を発表した全米学識者協会のディレクター、レイチェル・ピーターソン氏によると、孔子学院の教材は、中国共産党が敏感話題と位置付ける事件や事案について取り上げない。1989年の学生運動の弾圧「六四天安門事件」や、迫害政策に置かれている法輪功などについては明記がない。また、台湾や香港の主権的問題やチベット、新疆ウイグル地域における抑圧についても、共産党政権の政策を正当化する記述となっている。
2011年まで孔子学院の教師を務めていた趙琪さんは、孔子学院との契約文書で「授業では法輪功や、チベットなどの敏感問題に触れてはならない」「『違法組織』に参加してはならない」と指示されていたと、2013年の大紀元の取材に明かした。
孔子学院と下部組織・孔子課堂は、世界130の国と地域に1500カ所以上ある。中国教育部から支給された教材を使用し、教員も本土から派遣される。中国当局は2020年までに、世界で1000の孔子学院設置を目指すという。
産経新聞が4月11日『歴史戦・第20部 孔子学院(1)』で報じた文科省国際企画室の話によると、「孔子学院は大学間での取り組みであり、設置や認可の届け出は必要ではない」という。このため、政府での担当部署が明確でない模様。
記事によると、日本当局側が孔子学院の日本での普及程度が掴みにくいのは、中国当局が「政府間協定」ではなく、自由裁量で開設できる「大学間協力」という方式を採用していることもある。
2月26日衆院予算委員会分科会で、自民党の杉田水脈・衆議院議員は孔子学院の設置数について質問したが、文部科学省高等教育局長は、孔子学院側の公式発表数を引用した。杉田議員は、事前の独自調査に基づき、文部科学省や外務省でも孔子学院の設置数など実態を把握をしている部署がないことを指摘。「無防備である」として、政府に対応を求めた。
(編集・佐渡道世)