王岐山氏、政界復帰濃厚「米中問題に注力」との見方
昨年10月の中国共産党大会以降、最高指導部から退任し、一般党員となった習近平国家主席の腹心である王岐山・前中央規律検査委員会書記に関して、このほど政界に復帰する動きが出た。同氏は1月29日、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の代表に指名された。専門家は今後、王氏が引き続き党内要職に就くとの見通しが濃厚だと分析した。海外メディアは、要職に就任した後、王氏は米中関係の改善に力を入れるだろうと予測している。
湖南省人民代表大会(地方議会に相当)は29日、同日の会議で王岐山氏を含む118人の全人代の代表を選出したと発表した。王氏のように、中国最高指導部である中央政治局常務委員を退任後、全人代の代表に選出された前例はない。このため、これまで香港メディアが報じた「王氏が3月以降国家副主席に就任する」との見方が強まった。
WSJ「王氏が米中関係改善に注力」
米紙・ウォールストリート・ジャーナル(30日付)は、中国当局情報筋の話を引用して、米中貿易の摩擦が激化した今、習近平氏は信頼できる政治盟友である王岐山氏を起用し、米中外交問題の担当に充てる意図がある、と報道した。
王氏は、胡錦涛氏が国家主席だった当時、国務院副総理と胡氏の特別代表として、米国との間で行われた「米中戦略経済対話」に数回参加した。このため、王氏は米政府との人脈を持っている。
過去数カ月の間、王岐山氏は、ヘンリー・ポールソン元財務長官やトランプ大統領元側近のスティーブン・バノン氏などと会談した。
また、王氏は国内においても、反腐敗キャンペーンのほかに、2003年SARS(重症急性呼吸器症候群)への対応も高く評価されていた。03年、王氏は海南省トップから北京市代理市長に緊急任命された。同氏は、SARSの蔓延防止の対策、市内で医薬品や食品不足の改善などに辣腕を振るった。これがきっかけで、国内世論は緊急事態への対応力を評価し、王氏に「消防隊長」とのあだ名を付けた。
WSJは、「消防隊長」の王氏の政界復帰は、中国当局がトランプ政権の下、米中関係に強い不安を抱いていることを浮き彫りにした、と分析。
米トランプ政権は先週、中国製太陽光パネルなどを対象に、緊急輸入制限(セーフガード)を発動した。
WSJは、トランプ政権は「アメリカ・ファースト」のスローガンの下、中米貿易不均衡の解消のため、中国に対してさらなる強硬姿勢を示していくとの見方を示した。
08年国務院副総理の職に就いた王岐山氏は、2010年人民元の対ドルレートを「固定変動制」から「管理変動相場制」へ移行させる業務を担当するなど経済通としても知られている。
「党内江派への引き締めを継続する」
12年以降、習近平国家主席が主導し王岐山氏が指揮してきた反腐敗キャンペーンで、党内江派を中心とした汚職官僚が数多く摘発された。江派陣営では習氏と王氏への不満が高まっているとみられる。
昨年10月の党大会で、江派からの強い抵抗を受けて、王岐山氏は最高指導部での再任を諦めた。
大紀元時事評論員の夏小強氏は、王岐山氏の復帰は江派にとって「大きな心理的な打撃」となる、とした。また、習近平氏は今後王氏を再起用することで、党内江派を引き続きけん制していく狙いがあるとした。
一方、夏氏は王岐山氏が国家副主席に指名されても、「中国共産党の独裁体制では、中国経済や外交などの面で大きな変化は期待できないだろう」と強調した。
胡平氏「王氏は過去最大の権力を持つ国家副主席になる」
在米中国時事評論家の胡平氏は、王岐山氏は「これまでで最大の権力を持つ国家副主席になる可能性が高い」とした。
まず「習近平氏が、現在一般の党員となった王氏を政権内の重要なポストに就任させるには、まず全人代の代表の資格がないとダメだからだ」
胡平氏は、今後習近平氏が自身を補佐する王氏に対して、外交などにおいて大きな権限を与えて、重要な任務を与えるだろうとの見方を示した。
「王岐山氏は習近平氏が最も信頼している人だからだ」
(記者・李玲浦/駱亜、翻訳編集・張哲)