中国 台湾海峡で頻繁に挑発、米影響力に対抗=台湾学者
最近、中国当局が台湾海峡で挑発行為を繰り返している。人民軍が昨年10月下旬以降、同海峡での巡航と飛行が活発化したほか、中国当局が今年に入って一方的に、同海峡を飛行する新たな民間航空機用航路「M503」の開通を宣告した。専門家は、一連の挑発行為は、アジア太平洋地域における米の軍事影響力に対抗するためだと分析した。
心理戦を超えた神経戦を展開
中国当局は4日、現航路の流通量を緩和するために、航空路「M503」の北方向と3本の支線航空路の使用開始を発表した。「M503」は台湾海峡の中間線付近まで約7.8キロ離れている。台湾政府は、同航空路の開通が「領空を侵犯する可能性が高い」と強く抗議した。
国立台湾大学国家発展研究所の曽建元博士は、中国当局の発表について、「中国当局は一方的に、2015年3月に行われた馬英九政権との合意を破棄した。台湾への挑発行為だ」と批判した。
曽氏によると15年、台湾の馬政権と中国当局の間で、台湾海峡での航空路設定について「必ず両政府間の交渉と双方の承認を経なければならない」と合意した。
「当時、馬英九総統の強い意向で、中国当局は同航空路を(海峡の)西側に移動した」
曽氏は、今回中国当局が一方的に台湾との合意を破棄したことは、今後台中政府間、または民間の事務的レベルの協議ルートが全面停止になることを意味すると指摘。
台湾は国際民間航空機関(ICAO)の加盟国ではない。このため、台湾はICAOに対して中国側の航空路「M503」使用開始に異議を申し立てることができない。この状況に、台湾政府は究極な選択を迫られているという。
「台湾は中国の航空路使用開始を黙認するのか、あるいは中国の高圧な態度に徹底的に抵抗していくのかを決める必要がある」
曽氏は、中国側が2つの目的を達成するために、現在対台で心理戦を超えて「神経戦」を行っていると非難した。
一つ目は、台湾政府が今の米国寄りから中国寄りに変化させることだ。台湾政府が中国当局の反応に戦々恐々となり、中国の顔色や機嫌を常に伺うようになることが狙いだという。これによって、最終的に同地域における米の影響力の弱体化を実現していく。
2つ目は、台湾が中国の一部であることを国際社会に対して強くアピールすることが狙いだ。
台湾が少しでも中国当局に妥協をすれば、今後中国当局は対台の圧力をさらに強めていく、と曽氏が警告する。
「M503」航空路のほかに、中国は年明けに、文化面でも引き締めを強めた。
当局が7日、台湾人有名女優のルビー・リン(林心如」氏が製作・主演したテレビドラマ(中国語タイトル『我的男孩』)の放送を中止した。中国国内で2話だけを放送された直後の決定だ。理由は、同ドラマの製作に、台湾文化省から約2000万台湾ドル(約7600万円)の補助金を受けたとして、リン氏は「台湾独立支持者だ」と通報されたからだという。
「台湾は、米軍の重要戦略的位置にある」
台湾は米国にとって、アジア太平洋地域の安全保障上で、重要な戦略的位置にある。
米軍は太平洋地域の軍事戦略において、3つの「列島線(Island Chain)」がある。台湾は、このうちの第一列島線の中間位置にある。この第一列島線は、米アラスカのアリューシャン列島から始まり、千島列島、日本列島、琉球諸島、台湾、フィリピン、マレー半島まで続く島や海域を指す。米軍は、この列島線で、主に中国当局の西太平洋への軍事侵入を防衛してきた。
独メディアのドイチェベレ(6日付)によると、一部の米国専門家は、緊迫の朝鮮半島問題において、米政府は台湾をカードに、北朝鮮の後ろ盾である中国をけん制する狙いがある見方とのを示した。
これに関して、曽氏は同様な見解を示した。「朝鮮戦争中、米政府は当時、米海軍第7艦隊(現在日本の米海軍横須賀基地を母港としている)を台湾付近に派遣し、中国の台湾海峡での軍事行動をけん制したことに成功。この結果、朝鮮半島から周辺地域までの戦火の広がりを阻止できた」
一方、「台湾に挑発を繰り返す中国当局は実に、あるリスクを冒している」。中国側が台湾問題で失策すれば、米国は台湾をはじめ、同地域各国との軍事連携を一段と強化していく可能性があるからだと、曽氏が述べた。
また、中国当局は現在、ユーラシア大陸、西太平洋とインド洋などを網羅する「一帯一路」経済圏構想を推進している。台湾海峡などの地域で、中国が他国と政治的、また軍事的な対立が高まると、「一帯一路」政策の推進に打撃を与えることになる。「経済的影響力を拡大したい中国にとっても、得策ではない」と曽氏が指摘した。
一方、米下院は9日、米の全レベルの政府官僚と台湾高官の相互訪問許可を盛り込んだ「台湾旅行法」の草案を全会一致で可決した。
同草案が可決される公算が大きかった。これに反発して、中国軍が台湾海峡で挑発行為を繰り返した可能性が高いとみられる。
「台湾旅行法」の成立には、今後上院での可決とトランプ大統領の署名が必要だ。成立すれば、法的に米大統領の訪台と台湾総統の訪米が可能になる。
(翻訳編集・張哲)