トランプ米大統領と習近平中国国家主席(FABRICE COFFRINI,MANDEL NGAN/AFP/Getty Images)

トランプ大統領訪中前 好意的な3つの動きに込められた意味

11月5日、トランプ米大統領が13日間に及ぶアジア歴訪に出発した。すでに訪日を終えた同大統領は韓国を訪問した後、8日にはいよいよ北京に到着する。米大統領に就任後、初の中国公式訪問に臨む同大統領だが、訪中に先立ち同大統領が中国政府に向けて「好意」をアピールしたことに内外から注目が集まっている。

中国政府に向けて「好意」を示した3つの動き

『香港経済日報』は6日、トランプ大統領が訪中前に、中国政府に向けて示した「3つの好意」について分析している。

1つ目は、訪中に先立ち米連邦航空局(FAA)が米中耐空証明協議に署名したことだ。これにより中国に対し、米国をはじめとする諸外国に航空機を輸出する門戸が開かれることになる。

2つ目は、11月6日に行われたトランプ大統領と安倍総理の合同記者会見で、同大統領が日米安保条約と尖閣諸島問題について触れなかった点が挙げられている。

3つ目は、ホワイトハウス国家通商会議の委員長で、対中強硬派としても知られる経済学者のピーター・ナヴァロ氏を今回のアジア歴訪に随行させなかったことだ。

同紙は、今回の訪中は貿易問題で中国に「喧嘩」を売りに来るのではなく、両国の協力体制を模索しに来るのだと中国政府にアピールしている、と分析する。

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最優先議題は「北朝鮮核問題

今回の米中首脳会談では、両国間の貿易摩擦問題と北朝鮮の核開発問題が二つのテーマになるが、その中でも北朝鮮の核問題は最優先な議題になるとみられる。

トランプ大統領は就任以来、北朝鮮の度重なる挑発行為に対し、度々ツイッターで激しい言葉で応酬し、国連安保理で採択した経済制裁の発動、日本や韓国との合同軍事演習など数々の対抗措置を講じてきたが、解決の糸口はつかめていない。その一方で、北朝鮮は6回目の核実験を行って、北朝鮮が実質的に核保有国であることを世界に示している。

それにより北朝鮮の核の脅威にさらされている日本と韓国では、北朝鮮に対抗するための核保有論さえささやかれるようになった。北朝鮮が核兵器を開発したことで、北東アジアが核軍備競争と冷戦突入の危機に見舞われる恐れがある、と危惧する声も聞こえてきた。

米プリンストン大学の社会学博士、程暁農氏は4日、米国営ラジオ局VOAの特別報道番組の中で、仮に北東アジアが新たな冷戦に突入したとしても、かつての米ソ冷戦時代とは様相が異なるだろうとの予測を示した。

1つ目の違いは、旧ソ連は食料やエネルギー資源の国内調達が可能だったが、北朝鮮は石油をはじめとする戦略的資源の多くが不足しているという点だ。これを解消するため、北朝鮮は政府主導でさらに良識に反するような行為(偽札製造、麻薬販売、人質を取るなど)に走るだろう。

2つ目は、旧ソ連の指導者と中国の指導者は、対立していても、戦争は望んでいなかったという点だ。それに対し金正恩総書記は政権を維持するためなら戦争もいとわない姿勢を明確にしている。そしてその戦争を最も恐れているのは北朝鮮ではなくその周辺国家だ。

中国もまた、北朝鮮の崩壊により隣接の中国東北地区が巻き込まれ被害を受けることを危惧している一方で、金正恩総書記の暴走に気が気ではない。

なぜ、今回の米中首脳会談に期待されるのか

 

トランプ大統領は北朝鮮問題を解決するためには習近平国家主席の協力が不可欠だと認識しているため、中国国内の政治問題で忙殺されていた習主席に協力的な姿勢を示してきた。 

習主席とトランプ大統領が前回顔を合わせたのは、7月にドイツのハンブルグで開催されたG20サミットだった。だが今回の訪中でトランプ大統領が再会するのは、当時よりもさらに政権内部の地位を固め、より大きな実権を握った習主席だ。10月末に第19回党大会を滞りなく成功させた習主席は、党内の自身の地位を高めたうえ、金正恩総書記の盟友・江沢民一派からさらに権力を奪回することにも成功している。つまり、今の習主席は約束を確実に果たせる真の実力者となっている。

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そのため、今回の会談が何らかの成果を挙げるのではないかと内外からの期待が高まっている。

時事評論家の陳破空氏はVOAの特別番組で、「米中が協力して北朝鮮問題を解決できるかどうかは、習主席とトランプ大統領の決心に左右されるだけでなく、互いに本心から相手と向き合って、本音をさらすことができるかどうかにかかっている」と指摘している。

(翻訳編集・島津彰浩)

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