現世で持っている富や地位は、前世で徳を積んだから。ただし、悪事を働いてそれらを得た人には、相応の報いと災難が待っています。悪事とは、盗み、利己、悪事のそそのかし、嫉妬など。人間の行動も、心に萌した念も、すべて天から見られているというお話です。
明の時代、徐池(じょち)という男性がいました。彼は裕福でしたが、近所には更に裕福な徐八(じょはち)がおり、徐池はその立派な屋敷が欲しくてたまりませんでした。徐池は徐八に家を売るよう持ちかけましたが、徐八は首を縦にふりません。そこで、徐池は一計を案じました。
ある日、徐池は甘い言葉で徐八の息子を賭博に誘い込みました。それまで賭博などやったこともなかった徐八の息子はすっかり夢中になり、いつのまにかすべての財産をつぎ込んでしまいました。徐八は息子に激怒する一方、負けを補填するため、泣く泣く家を手放すしかありません。徐池は、まんまと屋敷を手に入れ、徐八は失意の中で憤死してしまいました。
しばらくして、徐池の息子や孫たちが、不治の病にかかりました。気を病む徐池の夢に、祖父が現れました。「不正に徐八の家を手に入れた罪で、お前にもうすぐ災難がふりかかる。あの世で、徐八がお前を訴えたのじゃ」
怖くなった徐池は次の日、天に祈るために道観を訪れました。すると、そこに寝泊りしていた乞食が驚いたような顔をして徐池を見つめていました。徐池が理由を聞くと、乞食は言いました。「昨夜、亡くなった徐八様が夢に出てきました。息子を誘惑して賭博に引きずりこみ、散財させたとして、徐池様をあの世で訴えたそうです」
その後、徐池は不治の病にかかり、苦しみながら亡くなりました。彼の息子や孫たちも病で次々と亡くなり、村人たちは悪事を働いた報いだと噂しました。
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陰謀を企てて人の家を騙し取り、仲睦まじかった父子の関係を乱した罪は、とても重いというお話です。
(翻訳編集・郭丹丹)
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