中国メディアが異例の報道「中国軍に実戦は無理」
中国共産党メディアと軍の新聞はこのほど合同で、中国軍は実戦に耐えられないだろうとする、極めて異例の報道を行った。記事は、軍制改革が行われた背景にも言及している。
9月10日に掲載されたこの記事では、軍制改革の重要なスケジュールと、既に実施された具体的な内容を、初めて詳細に紹介したうえ、中国軍が現在深刻な危機に直面していることを認め、中国はかつてないほどの安全保障上の問題やリスクを抱えていると述べた。
2012年の共産党18大以降、軍制改革の必要性と緊急性を訴えるシグナルが、再三にわたり発せられてきた。13年11月、第18回三中全会の席で、軍制改革は「党の意志及び国家的行為のレベル」に上げられ、初めて単独の項目として全会の決定事項に盛り込まれた。
今回の報道では、13年3月11日の両会の軍代表会議の席で、習近平中央軍事委員会主席が中国軍に対し、作戦も勝利もできない中国軍の現状について批判を浴びせ、初めて「打胜仗(戦争に勝つ)」という言葉を使ったという。習主席は「実戦に耐えられるかどうか、戦争で勝利できるかの問題が、最大の欠点であり、最大の弱点である。中には致命的と言ってよいほどの問題も存在する。心配なことこの上ない。改革なくして戦争には勝てない」と厳しく叱責したという。
文中では、今回の軍制改革は「これまでの改革とも異なり」、「実戦に耐え、勝利する」軍隊を作るという明確な目標を掲げ、習主席の軍制改革は、まず軍上層体制から着手し、先に本部体制、大軍区体制と陸軍体制の改革から取り掛かったことも強調した。
習政権の反腐敗は「反クーデター」に他ならない
18大以降、軍当局から処分された副司令官以上の将校は62人。従軍経験のない江沢民は軍隊内での権力基盤を固めるため、自分に媚びる人物を高級将校に抜擢し、前軍委副主席の郭伯雄、徐才厚を利用して、当時軍事委員会主席を務めていた胡錦濤を蚊帳の外に置いた。江沢民が軍権を掌握していた20年余りの間、江の庇護下に、軍将校の人事決定は本人の実力ではなく、上司への賄賂の金額で行われるようになり、中国軍の腐敗は想像もできないようなレベルに達してしまった。
中国共産党の元老羅瑞卿の息子で、現在は米国在住の元中国軍幹部・羅宇氏は、腐敗が蔓延した共産党体制下では、現政権の反腐敗運動は実際には「反クーデター政策」に他ならないと指摘している。「なぜなら、軍隊、党務、政府系統のすべてが江沢民や曽慶紅ら江派の面々に掌握されてから20年にもなるため、党・政府・軍のすべてが腐敗しきっているからだ」
羅氏は「軍隊は上から下までどろどろに腐りきっている。その状態で戦闘力など語れるものか。給料を一日出さなかっただけでみな一目散に逃げていくだろう。(軍の出番が)一番多いのは閲兵式だ。閲兵にも給料を支払わなければならない。軍隊の腐敗レベルとその進行速度は、外部からは想像もつかないものだ。なぜなら、軍は高度に独立した機関であり、世論などによる監視・監督は不可能だからだ」
中共国防大学の金一南教授は、軍の主要士官が最も力を注ぐのは人脈の根回しで、本来の作戦に費やされる力は10%にもならないだろうと指摘している。
米国在住の政治評論家、陳破空氏もかつて、軍の内部はいくつかの派閥に別れているが、彼らは互いにかばい合い、利益を共有しながら、グループを形成させていると指摘している。
軍内部の人事昇進は「師爺」、「姑爺」、「少爺」の「三爺」ルートがある。「師爺」とは軍高官の身近な人物と関係のある者、「姑爺」は軍高官と親戚関係にある者、「少爺」は軍高官の子女と関係のある者。こうして、軍内部には確固たるグループが構築されており、軍高官の多くが同様のネットワークを持っている。例えば、失脚した徐才厚のグループは「東北の虎」と呼ばれ、同じく失脚した郭伯雄のグループは「西北の狼」と呼ばれていた。
胡平氏もかつて大紀元の取材に対し、軍改革を進めるうえでの習主席の基本的な考え方を分析していた。
「主席には僅かな軍隊(文官)経験があるけれど、ほとんど軍とは関係なく出世してきたという背景があるため、軍の要職に自身の腹心を使いたくても信頼を置く人間が少ない。主席が取った方法は、軍要職の将校を頻繁に異動させることだ。このようにすれば、軍高官が陰で結託して内部集団を構成することを防ぐことができる。仮に中央に対して不満や意見があったとしても、同僚の本音が分からないため、誰もそれを口にしようとしない。こうすれば、誰もが上からの命令に従うだけになる。最高指導者からすれば、こうなってくれたほうが安全だ」
(翻訳編集・島津彰浩)