人種の壁を超えて

自分のDNAを知れば 世界観が広がる

私たちのルーツはどこにあるのか。誰もが興味を抱くこの謎に迫ることが、科学技術の進歩により可能になってきた。最先端の遺伝子検査を通じて、自身のルーツを調べることができる。単一民族だと思っていた自分のDNAに、それ以外のものが入っていたとしたら?デンマークの格安チケット行検索サイト・モモンド(Momondo)社が、ユニークな「DNAの旅」という企画をスタートさせた。選ばれた一般応募者のDNA検査を行い、さらにコンテストを通じて分析したDNAに基づきルーツの旅を勝ち取るというものだ。

この企画は、多民族国家であるアメリカで行われた。まず、見知らぬ67人の参加者に対して、本人の了承を得た上でDNAを分析するための唾液を小さな容器に集める。さらに、それぞれの出身地、家族、文化、歴史などのバックグラウンドや、彼らの好き・嫌いに関する価値観などをインタビューした。

参加者たちのコメントは、多様に渡った。

「私はイギリス人であることを誇りに思っている。自分はイギリス人以外の何者でもないと思う」

「僕はバングラデシュの愛国者だ」

「私は100%アイスランド人。絶対に」

「黒人であることに、誇りを感じている」

「私たちが最も優れた民族で、これは事実よ」とフランス人女性。

「僕は100%ベンガル人だ」

「揺るぎないイラク人だ」

「僕はキューバ人だよ」

 主催者は、「他の国や異なる国籍の人を考えた時に、どうしてもしっくりこないとか、または嫌いとか、思い当たることがありますか?」と質問した。

「ドイツ人はあまり好きではないね」とイギリス人の男性が少し躊躇しながら話す。

「インドとパキスタン。おそらく紛争が原因だと思うけど」とバングラデシュ人の男性。

「トルコ人が嫌い。いえ、国民ではなくて、つまりトルコ政府のことね」と慌てて訂正するクルド人女性。

「フランス人は?」「んー、ダメだね」とキューバ人の男性は首を横に振った。

 これらの答えを見ると、多くの人が自分の国の民族と文化に誇りを持っているようだ。一方、他国の人に対する先入観を持つ人もいた。

 2週間後、全員が一室に集合し、一人一人に分析結果の入っている封筒が渡された。

「30%がイギリス人で…、5%がドイツ人だ」と、ドイツ人は好きではないと言ったイギリス人男性が驚きの表情を見せる。彼にもドイツ人のDNAが交じっているのだ。

「コーカサスって、トルコなの?」とトルコ人が嫌いと言ったクルド人女性。彼女は結果を見て恥ずかしげに顔を伏せた。また、DNA検査によって、会場にはこのクルド人女性の従兄弟がいることが分かった。

フランス人は優秀な民族と論じた女性は、「私の32%はイギリス人?」と、信じがたい表情で声をあげた。

100%バングラデシュ人だと主張していた男性は、「11%がイギリス人…これが本当に僕の結果?」と腑に落ちない様子。

「東ヨーロッパだって、本気か?冗談だろう」と、自分に14カ国のDNAが入っていることに唖然としたキューバ人男性。

日常の中で培われた先入観(偏見)が、往々にして人と人との間に多くの誤解、人種差別、憎しみを生じさせる。自分のDNAを知れば、世界観や異なる人種に対する見方も自ずと変わっていくだろう。「開かれた世界は開かれた心で始まる」がこの企画の真意なら、すでに効果が出ているのかもしれない。DNAというルーツの根源を探してみれば、全世界の人々と繋がっているのかもしれないのだから。

今回のプロジェクトは応募者数500人の枠を設けており、DNA検査キットを獲得する第1段階は5月3日に締め切られる。DNAのルーツの旅に出る機会を勝ち取る第2段階の締め切りは8月3日だ。

(翻訳編集・豊山)